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アードベッグの数奇な運命を紐解く

■ スコッチウイスキーとは
独特のピート香で知られるスコッチウイスキーは、イギリスを代表する世界5大ウイスキーの筆頭といってもよい存在です。
現在、スコッチウイスキーは2009年に定められた規則によって明確に定義されており、糖化から発酵、蒸留そして熟成に至るまで、すべての製造工程をスコットランドで行ったウイスキーのみが、スコッチウイスキーを名乗ることができます。
スコッチウイスキーの最大の特徴である、ピートと呼ばれる泥炭を使ってモルトを燻して乾燥させる工程は、スコッチウイスキーにしかないスモーキーフレーバーを与えています。
ウイスキーを飲んだとき、何となく煙いなと感じたら、それはスコッチウイスキーであると考えてまず間違いないでしょう。
蒸留所や、蒸留所が造るさまざまな銘柄によってスモーキーさは異なりますが、スコッチウイスキーの中でもとりわけヘビーなピート香があり、飲んだ瞬間にかなり煙いと感じるとしたら、アイラモルトか、アイラモルトをキーモルトにしたブレンデッドウイスキーであると断言していいほどです。
それほどにアイラ島で造られるウイスキーは、スコッチウイスキーの中でもピート香が強いヘビーなボディに仕上がります。

■ 高い名声を得た蒸留所
スコットランドには多くの島が点在しており、それぞれの島でウイスキーづくりが行われてきました。
アイラ島もその一つで、ここに住む人たちはボウモアとポート・エレン、そしてポート・シャーロット周辺に集まっています。
その理由は、アイラ島の大部分が丘陵地帯か、平地でもそのほとんどが農地だからです。
蒸留所は主にボウモアに多く集まり、1815年に島の南部、大西洋に面した小さな岬にできたのがアードベッグ蒸留所です。
ただ、アードベッグ蒸留所の設立年度とされる1815年以前の1794年には、実はすでに操業していました。
さらに造っていたのが密造酒だったため、施設もろとも操業できなくなってしまうのです。
アードベッグ蒸留所と言えば数奇な運命をたどった蒸留所として知られていますが、正式な操業以前からすでに波乱が予想されるスタートだったことが分かります。
とはいえ、アードベッグ蒸留所から生まれる強烈なピート香のアイラモルトは、たちまち多くのファンを惹きつけ、熱心なファンのことをアードベギャンと呼ぶほどに高い名声を得たウイスキーでした。

■ アードベッグ蒸留所がたどった数奇な運命とは
1815年、正式に蒸留所とした再出発したアードベッグ蒸留所は、アードベギャンと呼ばれるファンを生み出したほど、上質のアイラモルトウイスキーを造る優れた技術を持つ蒸留所でしたが、数奇な運命に翻弄され続けます。
アードベッグ蒸留所がたどった数奇な運命の始まりは1970年代、世界5大ウイスキーの産地の一つであるカナダのウイスキー会社による買収から始まりました。
1981年には操業を停止し、1989年、今度はワインや酒を扱うイギリスの企業に買収されたのです。
1996年にもしばらく操業を休止し、本格的にウイスキーづくりが再開できたのは1997年にグレンモーレンジィ社による買収でした。
スコットランドのシングルモルトウイスキーの会社としてよく知られるグレンモーレンジィ社の買収があったからこそ、アードベッグ蒸留所は再びウイスキーづくりに取り掛かることができたのです。
高い名声と多くのファンを持ちながら、カナダやイギリスといった海外の企業による買収で思うようにウイスキーづくりができなかったアードベッグ蒸留所は、やはり数奇な運命をたどった蒸留所と言えます。

■ 老舗百貨店を祝って造られたアードベッグ
アードベッグ16年 シングルカスク1990は、紅茶の国・イギリスで老舗として知られるフォートナム＆メイソンの創業300周年を祝い、コラボレーションして造ったウイスキーです。
シェリー樽熟成のアードベッグをボトリングした特別な一本は、300周年のお祝いということもあって、世界でたった300本限定リリースされたことから、アードベギャンはもちろんのこと、ウイスキーのコレクターにも垂涎のアイテムというべき逸品となっています。