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都会的なバーボンの甘い香り

■ドイツ系移民の兄弟が立ち上げたブランド
お酒の事をあまり良く知らない人でも、I.W.ハーパーという名前やラベルには覚えがあるのではないでしょうか。
I.W.ハーパーは、アイザック・ウォルフ・バーンハイム氏と、その弟ベルナルドが1877年からスタートさせたブランドです。
彼らはドイツ系の移民で、兄のアイザックがアメリカに渡って来た当初は弱冠19歳でした。
彼は雑貨商や競馬の競走馬の世話などをして仕事をし、やがてケンタッキー州パデューカに移り住み、弟をドイツから呼んで会社を創業します。
当時粗悪な酒類が多かった中、ウイスキーの樽売りから商売を始めた兄弟は、量り売りから初めてガラスボトルでの販売スタイルを始めるという快挙を成し遂げました。
小分けで売るにも陶磁器の瓶売りしか無かったところを、透明なボトルに入れることで品質やプルーフ（アルコール度数）を確認できるようにしたのは素晴らしい発明です。
中身がどんな酒かわからない信頼度の低い商品ではなく、目で見て判断できる彼ら兄弟のボトルが売れに売れたことは想像に難くありません。
同時に、顧客を裏切らず、常に質の高いきちんとした酒を提供するという彼らの強いポリシーとこだわりを感じられるエピソードと言えます。
ちなみになぜハーパーかと言うと、ブランドとしてアメリカで通りの良いネーミングにするために、友人のフランク.B.ハーパーから名前を借りたそうです。
友人はお酒造りに関わっていたわけではなく競走馬のブリーダーだったということですが、彼らのウイスキーの良き顧客であったことは間違いないでしょう。

■土臭さのない洗練されたウイスキー
I.W.ハーパーはよく、都会的で洗練されていると表現されます。
この表現は、どちらかと言うとアメリカの土臭さが独特の味わいと言われるバーボンにおいて、一種格別されたブランド力を感じさせます。
創業当初、ライ・ウイスキーを作っていましたが、アイザックはブレンダーとしてのセンスが高く、着実に業績を伸ばして行きます。
現z内本社があるルイヴィル移転したのは1888年で、この時に原酒の仕込みから販売までワンストップで行う酒造メーカーとして確立したと言えます。
I.W.ハーパーと言えばラベルにも描かれている紳士がいますが、彼は雇われたセールスマンのトーマス・ハーパーという人物で、とても紳士的な言動で顧客のハートを掴んだ広告塔です。
彼の教養溢れる立ち居振る舞いと、品質の高い実直なウイスキーのイメージとがピッタリ重なり、エレガントで洗練された都会的なバーボンの代名詞となったのかもしれません。

■10年の熟成の歴史を香りと共に楽しむ
そんなI.W.ハーパーの10年熟成ヴィンテージボトルには、ちょっと肩肘を張ったようなタイプとストレートの2タイプがあります。
特に価格差はありませんが、比較的気軽に飲めるボトルでもありますので、是非歴史の香りを味わってみてください。
上品で独特の甘い香りが鼻をくすぐるはずです。
バーボンはスコッチのようなスモーキーな香りはありませんので、そちらがちょっと苦手という人でも楽しめるでしょう。
I.W.ハーパーはホワイトオークの上品で甘やかな香りが特徴で、バニラやナッツのような柔らかい熟成香を感じられます。
バーボンはアルコール度数40%以上で瓶詰めしなければならないとされていますので、希釈率が小さく、封を切るとより高い香りが立ち上って来るのが特徴です。
確かに度数はありますが、ほんの少しをグラスに注いで、1杯をゆっくりと味わってください。
バーボンは樽の中を焼いて使うので、短い期間でも豊かな風味が出るよう工夫されています。
また、兄弟が会社を立ち上げたケンタッキー州は夏と冬の寒暖差が激しく、オーク樽だと熟成を早めることが可能です。
10年では長期熟成とは言えない、そう考えるとすれば、ケンタッキー州の気候やバーボンの特性、バーンハイム兄弟の腕を知らない素人の考えと言えるでしょう。