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■芋焼酎界のレジェンドたち
焼酎を愛する人たち、中でもとりわけ芋焼酎が好きな人たちにとって特別な存在の銘柄があります。
それは「3M(スリーエム)」と呼ばれている3品で、森伊蔵酒造の「森伊蔵」と白玉醸造の「魔王」、そして村尾酒造が造る「村尾」です。
この「3M」は「幻の焼酎」とも呼ばれ、絶品の美味しさを備えながらも生産数が非常に限られているために、レジェンド的な存在となっています。
「森伊蔵」は5代目当主が父親である4代目当主の名前を取って命名した芋焼酎で、130年の歴史を誇る森伊蔵酒造の力作です。
白玉醸造は100年以上も前に、鹿児島県の桜島の麓で操業を開始しました。
白玉酒造では、熟成するたびに減少していく長期醸造酒のことを「天使の分け前」と呼んでいました。
そして誕生した「魔王」は「天使を誘惑し、魔界へ特別の酒を調達する悪魔たちによってもたらされた貴重な酒」という意味で命名されたのです。
「村尾」は村尾酒造の代表であり、熟練した腕を持つ杜氏の村尾氏みずからが精魂込めて造り上げた芋焼酎です。
明治35年に創業して以来、仕込みに使用されている甕は明治、大正時代に日本国内で作られたものが今も変わらず使われています。
焼酎の味を決める醸造器は村尾氏が自分で手づくりし、溶接から調整まで全てをこなしています。
それぞれの銘柄が異なる個性を持っていながらも多くの人を魅了しているのは、造り出す人々の努力がその味に込められているからと言っても過言ではありません。
レジェンド銘柄となる裏側には、継承され続ける伝統の技と手間を惜しまず焼酎造りに励む人々の支えがあるのです。

■歴史と伝統が継承される村尾酒造
村尾酒造は1902年(明治35年)に、鹿児島県川内市に焼酎醸造の拠点を構えて創業しました。
初代の村尾翁吉氏が焼酎醸造を始めてから二代目の村尾一二氏、三代目の村尾寿彦氏へと引き継がれ、現在は四代目の氏郷真吾氏へと伝統が継承されています。
四代目の当主である氏郷氏は、三代目の村尾寿彦氏の二女の夫に当たり、2015年に蔵を引き継ぎました。
引き継いだ当初は「村尾の味が変わった」とのバッシングを受けたこともあります。
その名門の看板に大変な重荷を感じたこともあったと回顧する氏郷氏ですが、村尾酒造で10年以上もの間、焼酎造りの中心に立ち続けていました。
三代目当主は氏郷氏の腕前を「焼酎造りの天才」とまで称えており、四代目の引き継ぎにあたっては最も適した人物だったのです。
そして三代目の折り紙付き四代目が誕生し、伝統の味が引き継がれ、今もなお村尾酒造が造る焼酎は多くの人に愛されています。
中でも「村尾」は村尾酒造を代表する銘酒で、厳選したサツマイモの黄金千貫(こがねせんがん)を使用し、大正時代に作られた甕で仕込まれる「かめ壺仕込み」の手法は、これからも変わらず続いていくことでしょう。

■芋の旨味が感じられる逸品
村尾酒造が「かめ壺仕込み」にこだわるのは、サツマイモの美味しさを最も際立たせることができる製法だからです。
「かめ壺仕込み」は醸造に手間がかかり、熟成期間に関しても大変時間がかかります。
「村尾」を求める声が数多く寄せられても、この製法ではとても需要に対して間に合うだけの本数を供給することはできません。
それでもあえて量産しないのは、ひとえに「村尾」の品質を落としたくないとの村尾酒造のプライドが垣間見えます。
「かめ壺仕込み」で醸造される「村尾」は、黄金千貫のまろやかな甘さと香ばしい風味が大きな特徴です。
一口含んだだけで口の中いっぱいに芋の豊かな旨味が広がり、そのあまりの美味しさに虜になる人も大勢います。
飲み口が大変柔らかく、黒麹が放つ乳酸系の独特の香りが漂い、芋焼酎特有の芋臭さは全く感じられません。
甘さがありながらもすっきりとした味わいで、ついつい飲む量が増えてしまうまさに絶品と呼ぶにふさわしい仕上がりです。
飲み方の一番のおすすめは、やはり王道のお湯割りでしょう。
もちろんストレートでちびちびといただけば、至福の贅沢を満喫できることは確実です。
「村尾」ならどのような飲み方をしても、それぞれに最高の美味しさを味わえるに違いありません。