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■入手困難なプレミアム焼酎の中のプレミアム
焼酎好きなら一度は耳にしたことがあるのが魔王でしょう。
非常に本数が少なく入手困難なプレミア焼酎ですが、その中でもひときわ手に入らないのが魔王 古にしえのかめです。
そもそも魔王自体、量販店でも見かけませんし、画像などでラベルを見たことがあるだけという人も多いでしょう。
古にしえのかめに至っては、ラベルすら見たことがないという人のほうが多いはずです。
魔王は、2003年頃に日本で起こった本格焼酎ブームで、3M（スリーエム）と呼ばれた焼酎の中の一つです。
いずれも鹿児島県の焼酎なのですが、森伊蔵と村尾、そしてこの魔王が3Mと呼ばれた幻の焼酎です。
本格焼酎とは、原料の持つ香り成分が酒に溶け込みやすい単式蒸留機で蒸留した焼酎を指します。
当時はあっさりした麦焼酎に代わって、ちょっと風味の強い芋焼酎が爆発的なヒットとなっていましたので、特に鹿児島県の3つの焼酎は大人気となり、入手困難なプレミアム焼酎となりました。
今ももちろん焼酎の人気は高く、芋焼酎も不動の地位を獲得していますが、当時はあまりにも需要が高まり、まったく生産が追いつかない状況でした。
そもそも生産量は多いわけではありませんでしたし、天候に左右されて原料の芋が不作になれば、品質面から供給も絞らざるを得ません。
こうした出荷規制からインターネットで高額取引されるほどの高騰ぶりとなり、社会現象にまでなったのです。

■魔王の魔王たる所以
鹿児島県には約100軒の蔵元があり、芋焼酎を造っています。
芋焼酎は原料にサツマイモを使うため独特な甘い香りが特徴となり、その香りがたまらなく好きな人もいれば、ちょっと癖があって苦手だという人もいます。
ただ、大昔のように臭みというようなものではありませんので、長年研究に研究を重ねられた芋焼酎は、非常に柔らかく独特の魅力を持っています。
魔王もそんな芋焼酎ですが、造っているのは本土最南端の焼酎蔵、白玉醸造です。
白玉醸造の創業は1904年、明治37年のことですので、非常に長い歴史があります。
九州の大隅半島の西部にある鹿児島県肝属郡錦江町にあり、町は鹿児島湾と薩摩半島に面している立地です。
「天使を誘惑し、魔界への最高の酒を調達する悪魔たちによってもたらされた特別な酒」を造るために名付けたとのことですが、まさに日本中を虜にする魔力を持って生まれたと言えます。
このエピソードには酒造りが意味する側面があり、酒を樽で熟成する時に、樽の中で蒸発する分を天使の取り分というところが関係しています。
熟成途中の酒を取りに来た天使をも誘惑してしまうような、悪魔的魅力の酒が生まれたのも偶然ではないかもしれません。

■焼酎の未来の切り拓いた芋焼酎
魔王は、白玉醸造が黄麹菌を使用し、芋焼酎の独特の癖を少なくスッキリとした口当たりにするため試行錯誤されたものです。
確かにフルーティな柑橘系の香りが立つと言われますが、女性でも飲みやすく親しみやすい焼酎として知られています。
日本で第二次焼酎ブームが起こっていた頃、白玉醸造は世間とは逆に、若者の焼酎離れを危惧していたと言います。
必要なのは誰にでも飲みやすい焼酎であり、それをコンセプトに魔王を作り始めました。
当時の人気は麦焼酎で、最初はあまり知名度も上がらなかったそうです。
それでも焼酎の未来のため試飲販売などをコツコツと繰り返し、徐々にその名声を広めて行きます。
そして知名度が高まった頃に第三次焼酎ブームが起こり、一気に人気に火が付きました。
結果的にプレミアム焼酎の座を獲得し、幻と言われるまでの芋焼酎となったのです。
弛まぬ努力が芋焼酎の未来を切り拓いた瞬間でした。

■特約店のみで販売された魔王 古にしえのかめ
魔王 古にしえのかめは、現存する最古の魔王と言われます。
仕込まれたのは焼酎ブームが訪れるずっと前、もちろん魔王が全国流通する前のことです。
販売されたのは、蔵の周辺にあるごく一部の特約店のみでした。
このことから、古にしえのかめはすでに伝説の芋焼酎と呼ばれています。
銘酒魔王より更に飲みやすく、麹歩合を高めて芋の独特の臭みを取ったまろやかな風味が特徴です。
華やかな香り、飽きの来ない旨味、口に広がるやわらかな風味とひきしまった余韻を長く愉しめる革命的な逸品と言えるでしょう。