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大人気のスパークリングにも果敢に挑戦

■酒造会社になくてはならない人物
酒造会社にいなくてはならない人物として当然と誰もが思っているのが、杜氏です。
杜氏とはお酒造りをお米の選別に始まり、仕込みから完成までを全て行う職人のことで、杜氏になるには、先輩の仕事を見て学び、技術を盗んで一人前になるのが当然と考えられてきました。
山口県岩国市にある旭酒造株式会社にも、当然のことながら杜氏がいてお酒を作っていましたが、作っていたのは醸造アルコールを含む安い普通酒でした。
その普通酒の売上は年々落ち、現在の三代目である桜井博志氏が家業の旭酒造の当主になったときには、もはや酒造りはおろか、酒造会社の経営すらも破綻寸前の状態だったと言います。
この危機的状況を救ったのが、日本中で一度は飲んでみたい日本酒として大いに話題になる「獺祭」を生み出したことでした。
まさに「獺祭」が旭酒造を救ったのです。
ところが、その「獺祭」誕生の際には、当然いるはずの杜氏がいないという、まさに稀有な酒造会社となっていたのです。

■いかにして杜氏なしで日本一の銘酒と呼ばれるお酒を造り出したか
廃業寸前だったことから、三代目の桜井博志氏はこれまで作っていた旭酒造の普通酒製造を打ち切ります。
その代わりに取り組んだのが、無謀にも純米大吟醸だけを作るというものでした。
最初は杜氏が従来通り酒造りを行ったのですが、出来上がったのは実に珍妙な味わいの酒だったといいます。
これを受けて三代目は、これまで通りの酒造りをしたのでは、その技術や知識はやはり杜氏だけのものとなってしまうという危機感を抱きます。
また、杜氏は杜氏で、三代目が乗り出した地ビール醸造やレストラン経営が失敗したことによって、「もう酒造りをしたくない」と言い出したのです。
これらの出来事によって、三代目・桜井博志氏は、杜氏に頼って冬の間だけ酒造りをするのではなく、社員全員が酒造りができるようになることが望ましいと考えます。
そこで、杜氏の持つ知識や技術を全てデータ化し、三代目自らが社員とともに行う酒造りが始まりました。
結果的に、三代目が心底納得する酒が出来上がった上に、データ化された技術によって通年にわたって酒造りができるようになったことから、1年を通じて作る四季醸造に踏み切ることしたというわけです。

■杜氏がいないから新しい酒造りに果敢に挑戦できる
杜氏がいて酒を造ってもらうという酒造会社であれば、杜氏が作ってくれなくては新しい酒を造ることはできません。
その点、新しく生まれ変わった旭酒造の場合、最新の設備を導入し、データ化したやり方をベースにしたことによって、女性を中心に特に人気が出たスパークリングタイプの日本酒の製造にも、果敢に取り組んでいます。
それが「獺祭 磨き三割九分スパークリング」で、「獺祭」ならではのお米を極限まで精米歩合し、にごり酒だからこそ引き出せる山田錦の甘みをしっかり感じられる発砲タイプのにごり酒を造り出しました。
瓶の中で二次発酵するシャンパン製法と同じ方法をとっていることから、非常にきめ細かな泡ができるところも魅力です。
山田錦の甘みと、爽やかな発泡性を味わいつつ、最後には日本酒ならではの繊細でありながら骨太な味わいも持ち合わせた純米大吟醸を、さらに贅沢に三割九分までお米を精米して作った「獺祭 磨き三割九分スパークリング」は、女性はもちろんのこと、若い男性や、年を重ねた日本酒好きという人にも非常に好評です。
泡が抜けると、まるで気が抜けたように美味しくなくなってしまうということはなく、泡がなくなったことによって純粋に三割九分までお米を削って作った極上の純米大吟醸のにごり酒として楽しめますので、まさに一石二鳥とはこのことです。
スパークリングタイプの日本酒のため、冷蔵にて販売されていますが、冷酒とは一味違う発泡酒という楽しさを味わいながら、スパークリングワインやシャンパンにはない、お米の旨味や甘みといった美味しさが凝縮した味わいを堪能できるところが、「獺祭」のスパークリングの最大の魅力といえるでしょう。
普通に三割九分まで磨いた獺祭とともに、スパークリングタイプもぜひ味わってみたいものです。