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■異色の経歴を持つシャトーといえば
ボルドーワインの5大シャトーの中でも、とりわけ異色の経歴を持つといえばシャトー・ムートン・ロートシルトでしょう。
1855年、メドックのワインの格付けが行われた際に、絶対的な自信を持っていながら第一級に認められなかったことを、シャトー・ムートン・ロートシルトは長年ラベルに「第1級たり得ず、第2級を肯んぜず、そはムートンなり」と、明らかにその評価に不満を示す文言を記載し続けたことで知られています。
この並々ならぬ決意と、絶対に第二級ではないという確固たる自信が100年以上も変わらなかったメドックの格付けを変えさせ、シャトー・ムートン・ロートシルトを5つ目のシャトーとして認めさせます。
ここに現在は当然として受け止められているボルドーの5大シャトーが勢ぞろいしたわけですが、シャトー・ムートン・ロートシルトが第一級に認められるまでに、何と100年以上もの時間が経っていました。
第一級に認められたシャトー・ムートン・ロートシルトのワインには、「われ1級になりぬ、かつて2級なりき、されどムートンは昔も今も変わらず」という言葉が新たに刻まれるようになります。
実に、メドックに4つのシャトーが誕生したのが1973年ですので、118年の時が流れてからのことですから、感慨もひとしおであったろうと思われます。

■人々のハートをがっちりつかんだところも異色だったかも
ワインの品質に絶対の自信を持ちながらも、さらにこだわったのがワインのラベルです。
シャトー・ムートン・ロートシルトのワインボトルに貼られるラベルは、毎年著名な画家や彫刻家といったアーティストが手掛けることになり、これはフィリップ・ド・ロートシルト男爵による独創的なアイデアでした。
実に1922年から行ってきた独創的なアイデアによるシャトーの改革者であったフィリップ・ド・ロートシルト男爵は、非常に大胆不敵でカリスマを持った人物で、今ではすっかり当たり前のことであるワインの瓶詰めを最初に行ったシャトーは、シャトー・ムートン・ロートシルトだったのです。
その瓶詰めワインにさらに付加価値を与えたのが、芸術家たちによるラベルだったのは、言うまでもありません。
1945年以降になると、ダリやミロ、シャガールといった著名な芸術家が、シャトー・ムートン・ロートシルトのワインのラベルを描いていますので、芸術家たちにとっても楽しみなことであり、選ばれるのは名誉なことだったのかもしれません。

■シャトー・ムートン・ロートシルトのワインの味わい
5大シャトーの中でもとりわけワインの味わいにおいても個性が強いとされるのが、シャトー・ムートン・ロートシルトです。
ボルドーワインならではと言われる女性的な味わいや、ラフィットの優雅さ、さらにラトゥールの男性的な力強さとは一線を画す、独特のシャトー・ムートン・ロートシルトにしか出せない味わいを実現しているところは、さすがに第一級に認められただけのことはあります。
シャトー・ムートン・ロートシルトのワインは豊潤でふくよか、肉付きがよくてリッチなところは女性的だといえなくありませんが、10年以上もの長きにわたって熟成させていくにしたがって、獣肉のような野性味も感じられる、言葉で表現するのは非常にむずかしいワインとなるのが特徴です。

■記念日の贈り物にも最適
もう一つ、シャトー・ムートン・ロートシルトの人気の秘訣が美しいラベルにあります。
忘れられない記念日や、特別な年を祝う誕生日など、特定の年に作られたシャトー・ムートン・ロートシルトは、贈り物に最適です。
2005年のシャトー・ムートン・ロートシルトのヴィンテージは、濃密な黒い果実香にオーク由来のバニラ香がエレガントな味わいに仕上がっています。
このエレガントな中に、ほんのりと甘みと力強いタンニンが感じられ、見事なバランスで作り出された2005年ヴィンテージは、全体としては柔らかい印象に仕上がっているのが特徴です。