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シャンパンの帝王と日本との歴史

■日本でシャンパンといえば
日本で、シャンパンといえばどんな銘柄を思い浮かべますかと聞いたら、おそらくほとんどの人がドン・ペリニヨン、もしくはモエ・エ・シャンドンを挙げるでしょう。
けれど、フランスはもちろんのこと、イギリスではきっと答えが変わってきます。
返ってくる名前にクリュッグが多くなるはずで、とりわけイギリスはクリュッグが圧倒的多数になる可能性すらあります。
それというのも、19世紀からすでにクリュッグが作るシャンパンはイギリスにて高値で取引されており、現在は王室御用達にもなっているからです。

■日本でのクリュッグの普及
日本人にとって、シャンパンは日常的に飲むお酒ではありません。
おめでたい席で飲むお酒であり、口にすると言えば結婚式の披露宴に招待されたときくらいでしょう。
そのときでも、ウェイターやウェイトレスたちが注いでくれて、すでにシャンパングラスに入ったものを持って回っているので、どこのメーカーのシャンパンなのかが分からないことがほとんどです。
もしかすると発泡性のワインであるスパークリングワインで、シャンパンですらない可能性もあります。
正直言って日本人の中でシャンパンとスパークリングワインをすぐに見分けられるほど舌の肥えた人は、それこそセレブな人たちだけなのではないでしょうか。
そんなセレブたちが飲んでいるシャンパンとして広まったのが、ドン・ペリニヨン、通称ドンペリやモエ・エ・シャンドンだったことから、日本でいうところの高級シャンパンは、この2つが不動の知名度を確立しました。
しかしながら、世界においてクリュッグはシャンパンの帝王と呼ばれる至高のシャンパンであることから、何とか日本でもクリュッグを広めたいと考えたのが、創始者のヨーゼフ・クリュッグから数えて6代目にあたる現当主のオリヴィエ・クリュッグです。
1990年から2年間、クリュッグを広めるために東京に駐在したほどで、それくらいしないとクリュッグを知ってもらえないと感じたのでしょう。
当時、日本でのクリュッグの知名度はゼロに等しかったからです。
2年間の滞在により、オリヴィエ・クリュッグは堪能に日本語を話せるようになったといいますから、彼とつながりを持った人たちからクリュッグのシャンパンは広まっていったことでしょう。
ただ、オリヴィエ・クリュッグはワインソムリエやコレクターといった人たちに、直接クリュッグのシャンパンの魅力を説いて回ったことから、広く世間に広まったわけではないというのが正直なところかもしれません。
とはいえ、世界中にクリュッグのシャンパンを愛するクリュギストなる愛好家がいる中、6代目を継ぐ当主が大の親日家というのはうれしいことです。

■強い信念が生み出す最高級の味わい
クリュッグを支えているのは、いつでも変わらないクオリティと味わいを、愛好者に届けるべきだという信念です。
それゆえに手間のかかる製造方法をあえて守り続けているその姿勢は、クリュッグのシャンパンが帝王と呼ばれるのも分かる気がします。
第二次大戦後は複数のワインをブレンドするという製造方法に替えたクリュッグですが、それによって新たな味わいを生み出しました。
ベースとなるワインは常に250種類以上所持しており、その中から最適なものを選びだしたうえ、さらに完璧な味わいを求めて1000回以上ものテイスティングを行うというのですから、そのこだわりの姿勢には頭が下がる思いです。
そんなクリュッグが送り出したクリュッグ ヴィンテージ1998は、クリュッグでは珍しくシャルドネにフォーカスして作られたシャンパンです。
その味わいは、シャルドネならではのエレガンスな仕上がりとなっています。
クリュッグのヴィンテージはこれまでにもたくさん世に送り出されてきましたが、90年代にリリースされた中では、このクリュッグヴィンテージ1998が最後となりました。
クリュッグのヴィンテージは、ブドウの出来がとりわけ良い年にしか作られないことで有名ですので、一度は飲んでみたい逸品なのは間違いないでしょう。