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皇帝の愛したコニャックを現代へ


■ナポレオンに愛されたコニャック

クルボアジェは1809年、パリで創業されました。
エマニュエル・クルボアジェとルイ・ギャロワが設立した会社で、当初から高品質のコニャックを造ることを目指していました。
その華々しい名声とは反対に本社と工場は1828年からコニャック地方のジャルナックという静かな地で、蒸溜から熟成、ボトリングまでを行っています。
歴史の中ではナポレオンがこよなく愛したことで知られ、しばしば「ル・コニャック・ド・ナポレオン」（ナポレオンのコニャック）という愛称でも呼ばれています。
ナポレオン戦争のときには砲兵部隊にコニャックの配給を指示した記録も残っており、どれだけ愛されたかがうかがえるエピソードです。
1869年にはナポレオン3世が正式に皇室御用達に任命し、パリの栄光とともにその名を刻んだコニャックといえるでしょう。

■カテゴリーに多大な影響を与えたブランド

コニャックには下から「VS」「VSOP」「XO」などのカテゴリーがあります。
最高級は「Hors d'âge（オール・ダージュ）」といいますが、上にいくほど熟成年数が長く高品質とされます。
ただし一番下のVSでも星は3つ、通常なら2年以上で星3つとされる中、クルボアジェの基準では3年の熟成を要するのは厳しい基準です。
実は今では当たり前となっているこのカテゴリー分けを始めたのがクルボアジェです。
1910年、クルボアジェは世界で初めてコニャックの出来をグレードに分け、販売しました。
当時は星ではなく1つから4つのダイヤモンドのアイコンを割り当てましたが、これが後のコニャックのランクであるVSなどの星の考え方の基礎となったのです。
飲む人を裏切らないハイクオリティ、厳格な基準、その全てにおいて、クルボアジェは最高級ブランドの地位を確立しました。

■ギャロア家の貢献

コニャックの創始者であるクルボアジェの功績とともに、忘れてはならないのがギャロワ家です。
19世紀初頭、ジャルナックでコニャック事情を行っていたメインがエマニュエル・クルボアジェ、パリ郊外で卸売事業を確立したのがルイ・ギャロワでした。
1811年にはナポレオン・ボナパルト（ナポレオン1世）がギャロワのセラーへ訪問していた記録が残っています。
ナポレオン・ボナパルトは1821年にこの世を去り、それは今日あるクルボアジェ社が正式に設立する前だったため、1世とクルボアジェ社のパートナーシップが公になることはありませんでした。
それでもセラーの中で、最高のコニャックが皇帝とブランドを強く結び付けたことは想像に難くありません。
実際にナポレオンとブランドを強く結び付け、皇帝の紋章のシルエットを導入したのは1950年になってからのことです。
このパッケージがあたらめてブランドを強く確立させるのに役立ったことは間違いありませんが、もう少し1世が長くこの世に君臨していたなら、このパッケージの登場ももう少し早かったかもしれません。
エマニュエルとその息子たちはコニャックの品質を高めることを純粋に追い求め、ギャロワとその息子たちは彼らが造るコニャックの名声を高めることを純粋に追い求めました。
この両輪があってこそ、現在のブランドの地位が築けたことは間違いないでしょう。
もちろん現在もシャラント川のほとりに建てられたシャトーで、厳選されたコニャックが熟成されています。

■4大メーカーの名に恥じないクルボアジェ X.O.

クルボアジェは、ほかにヘネシー、レミーマルタン、マーテルという名だたるブランドと並び、4大コニャックメーカーと呼ばれています。
クルボアジェ X.O.は1986年の国際ワイン・スピリッツコンテストで優良コニャックに選ばれ、その芳香と味わいが強調された逸品として知られます。
11年から25年の長期熟成を重ねた最高級の成熟原酒で、その香りはエキゾチックとも評される逸品です。
クルボアジェのシャトーではフランスのトロンセの森から調達した樹齢200年のオークでできた手作り樽で熟成が行われていますが、味わいに豊かさをもたらすため小型の蒸溜器を使い、湿潤な環境でじっくりと寝かせる匠の技は、間違いなく皇帝の心を揺さぶった銘酒を今に伝えています。