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天翔けるつばめが運ぶエレガントな琥珀

■5大コニャックの一つ

ブランデーのブランドは、お酒を飲まない人でもその名を耳にしたことのあるほど有名なものでしょう。
世界には5大ブランドといわれるものがありますが、マーテルはもちろんそのうちの一つに数えられる大手です。
トレードマークはつばめ、颯爽と飛ぶその雄姿がラベルを飾っていますが、これはマーテル（Martell）社の名前とつばめ（Marlette）の響きが少しだけ似ていたことで採用されたというエピソードが残されています。
ブランデーの種類にはフランスの3大ブランデーがありますが、それがコニャックとアルマニャック、カルヴァドスです。
リンゴが原料のカルヴァドスはちょっと別として、コニャックとアルマニャックはフランスの一部地方のみで生産されるAOC（原産地呼称統制法）法の規定をクリアしたものだけが名乗れます。
マーテルはもちろん、この厳しい条件をクリアするコニャックであり、フランスにあるコニャックメーカーでは老舗中の老舗といえる存在です。
しかもマーテルはもともと高級コニャックを作るために仕込まれたものではなく、地元で愛される美味しいお酒が、ついには貴族が愛してやまない高級ブランデーに昇華したという歴史を持つのも特徴でしょう。
その作り方は古典や伝統を忠実に守り、チーフブレンダーは代々世襲という厳格なルールのもと、今も巧みに美しい優雅な味わいを生み出しているメゾンなのです。

■最古の歴史を持つメゾン

マーテルの創業は1715年です。
当時から独特の製造法を続け、今も伝承されるマーテルスタイルは、優雅で複雑な味わいを醸す絶妙なバランスを誇ります。
創業者はジャン・マーテル氏で、その名からも分かるように、マーテル社は代々世襲でコニャック作の技を受け継いできました。
現在はフランスの大手グループ、ペルノ・リカールの子会社となっているマーテル・マム・ペリエ・ジュエの所有会社となっています。
ジャン・マーテル氏は当時、シャラント川のほとりで貿易業をはじめた若い商人でした。
のちにここがコニャックメゾンになるのですが、ボルドリー地区のブドウ園で収穫したぶどうをトロンセのオークで作った樽で熟成させて作ったのが最初のコニャックといわれています。
今でこそコニャック全体の5％という最も希少なボルドリー地区のぶどうですが、マーテル社はその60%を所有しているのですから、ジャン・マーテル氏には先見の明があったといえるでしょう。
死後も息子や孫たちにその製法は継承され、1814年にはイギリスで最も売れたと記録を残すコニャックへと成長するのです。
VSOP (Very Superior Old Pale) を手掛けたのは1831年、その後も積極的に海外展開を図り、世界的に有名なコニャックとなります。
1912年にはクイーン・メリー号で、1977年にはコンコルドで提供される一大ブランドとなり、その地位を不動のものとしました。

■王者の責任を果たすマーテル ノーブリッジ

マーテル ノーブリッジは、フランスのことわざから名付けられたといいます。
それは古くからある「ノブレス・オブリージュ」という戒めであり、身分の高い人がそれを保持するためには責任が伴うことを意味しています。
マーテルがコニャックで築き上げた地位、誇り、美しさや優雅さに触れると、メゾンが長い歴史の中でそれを代々守るために大きな責任を果たしてきたことを感じずにはいられません。
優れたコニャックを作り続けること、そしてそれを味わうことには、相応の重みが伴うことを示唆しているかのようです。
コニャックの優雅さを重んじる人のために作られたというマーテル ノーブリッジ、その複雑な森の香りとフルーティーななめらかさは、マーテル独特の力強さを感じます。
エレガントでありながらどこか男性的なエネルギーを放つ、まさに現代のセレブにこそ似つかわしい、スタイリッシュなコニャックといるでしょう。