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スペイ川が生んだ名酒ノッカンドゥ25年リミテッドエディション

■数多くの名酒を生み出してきたスペイ川

ウイスキーを作るにあたってはさまざまな材料が必要となります。
麦はもちろんのこと、トウモロコシを使ってウイスキーを作ることもあるでしょう。
そして、どんなウイスキーを作るにしても水は不可欠な原料です。
この水が美味しくなければいかに製法にこだわったところで美味しいウイスキーはできません。
そのため、必然的にウイスキーを作る工場は美味しい水が採れる場所の近くに建てられることになります。
日本でも山奥に蒸溜所を建てたうえで水源を確保するメーカーがほとんどです。
ウイスキーマニアにとって、ウイスキーと水源はセットで記憶していることが多いのですが、その中でも有名なのがスペイ川です。
スペイ川はスコットランドの中でも屈指の急流として知られ、川の近くに人が集まるようなことはありませんでした。
しかし、19世紀後半頃にスコッチウイスキーの製造が本格的になると、スペイ川の水質の良さはウイスキー業者の目に留まるようになります。
19世紀の終わり頃には立て続けにスペイ川沿岸に蒸溜所にできるようになり、タムデューやカードゥといった今日まで残る蒸溜所が開業しました。
そして、今回紹介するノッカンドゥもこのスペイ川から生まれたウイスキーの一つです。

■100年以上の歴史を刻んできたノッカンドゥ

ノッカンドゥ蒸溜所は1898年に開業しましたが、この名前は現地の村に由来するものでした。
ノッカンドゥというのはゲール語で「商売の丘」という意味を表す言葉です。
おそらく創業者は、これからウイスキーを売りに出すにあたってこの名前は縁起が良いと考えたのでしょう。
この名前が功を奏したのか、小さな村で始められた事業にもかかわらず、ノッカンドゥはヨーロッパを席巻するウイスキーを造り出すようになります。
ノッカンドゥがほかの蒸溜所に比べて優れていたのは、先進的な技術を積極的に取り入れたところでした。
当時のスコットランドでは昼にウイスキーを造り、夜は休むという製造工程が一般的です。
しかし、ノッカンドゥではいち早く電気照明を取り入れ、ウイスキーを夜でも造れるようにしました。
これによってウイスキーを大量に生産できるようになり、ノッカンドゥはほかのスペイ川に建てられた蒸溜所よりも早く知名度を上げられるようになったのです。
創業から6年後の1904年にはロンドンの老舗ブランドW＆Aギルビー社に買収され、イギリス中にウイスキーを売り出せるようになるまで成長しました。

■きれいな水を活かした貴重なシングルモルト

そんなノッカンドゥがシングルモルトウイスキーを作り始めたのは比較的遅く、1970年代に入ってからのことです。
一つの蒸溜所で最初から最後まで造り上げられたウイスキーのことをシングルモルトと呼びます。
いち早く頭角を現したノッカンドゥといえど、シングルモルトを造り出すには70年以上の時を経る必要がありました。
スペイ川から取れる良質な水と大麦を使って慎重に造られたウイスキーは1980年代のヨーロッパで広く愛されるようになります。
同時に、この頃に造られたウイスキーのいくつかは熟成用として保管され、20世紀に入ってようやく発売されるようになりました。
ノッカンドゥ25年リミテッドエディションもその中の一つです。
熟成されたウイスキーの量が少ないため市場に出回る数が少ないのですが、その分味は格別のものがあります。
麦芽の香ばしい香りと甘みのある味は25年の熟成の賜物といえるものでしょうが、何よりもスペイ川のきれいな水でなければ造り上げられないものでしょう。
もちろんストレートで飲んでも美味しいウイスキーではありますが、ミネラルウォーターを使った水割りにしても美味しく飲める代物でもあります。
美味しい水を使って造られたウイスキーを、同じく良い水を使って薄めると一層味が引き立つかもしれません。
スペイ川のほとりに佇むノッカンドゥ蒸溜所に思いを馳せながら飲むのも良いでしょう。