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日本酒という無形文化財を守り続ける菊姫

■天正年間に創業した老舗中の老舗

菊姫を製造するのは、石川県白山市にある酒造メーカー、菊姫合資会社です。
精米を他所に頼むようなら酒造りを止めろという家訓に従い、今も全量自家精米しているという筋金入りの酒造ですが、その創業はなんと安土桃山時代にまでさかのぼります。
天正年間（1573～1592）、屋号を｢小柳屋（おやなぎや）｣として創業したのが始まりで、合資会社の柳酒造店となったのは明治35年です。
菊姫合資会社となったのは昭和3年で、昭和16年には宮内庁御用達となる栄誉を受けています。
純米酒醸造の研究を始めたのは昭和34年で、戦中戦後は米不足により事実上純米酒の製造は禁じられていましたが、復活を試みた結果昭和42年には全国清酒鑑評会に初出品し、金賞受賞の名誉に輝きました。
当時県内で吟醸酒を造れる蔵はほとんどなく、日本全国を見ても市販されている吟醸酒は少なかった時代です。
菊姫はこの昭和42年の出品以来、23年間も連続受賞の成績を残し、高い酒造技術によってその名をとどろかせることになるのです。
造る酒全体のレベルを原料から品評会レベルにまで高め、旨い吟醸酒として「大吟醸」 を発売したのは昭和43年です。
翌昭和44年には「本仕込み純米酒」を完成させ、菊姫の日本酒研究はどんどん躍進します。
その研究結果は昭和58年の山廃酒母の復活につながり、ついには「山廃仕込純米酒」の発売に辿り着きました。
山廃酒母を使うと米の旨みが乗った独特の純米酒ができますが、菊姫は日本で最初に山廃仕込純米酒の発売に成功したのです。
この製法は酒母の育成に手間がかかり、酒質の濃醇さから端麗タイプの清酒には不向きとされ消滅に近い状態でしたが、菊姫の研究は多くの人の心を掴む純米酒を生み出しました。
その神髄は、米を活かす清酒本来の味をひたすらに追求し、前進する姿勢にあります。
創業から一切歩みを止めることなく、真摯に酒造りに挑んで来たからこそ成し遂げたといえるでしょう。

■新しい酒造の在り方も模索

天正年間に歴史を持つ老舗でありながら、菊姫合資会社は新しい試みに常に挑戦し続ける姿勢を崩していません。
昭和62年には、全国で5番目となるコンピューター制御精米機の導入を実施し、翌昭和63年には「酒マイスター」を誕生させ、杜氏に変わる酒造技術者の育成を始めました。
これだけの歴史を持ちながら自社の伝統や格式に固執することなく、新しい考え方を否定せず未来を見据える柔軟な姿勢には、まったく頭が下がります。
平成に入ってからも全国清酒鑑評会で金賞を受賞し、通算で金賞23回、銀賞8回という素晴らしい成績を収めているのも頷けます。
平成16年には山田錦100％の米焼酎「加州剱」も開発するなど積極的な姿勢を見せ、平成19年にはIWC 2007で「鶴乃里」が初代チャンピオンサケを受賞しています。

■酒と技術者を育てる酒造

近年杜氏の後継者不足が深刻化し、各酒造が新しい試みにチャレンジを開始していることはご存じでしょう。
菊姫合資会社のすごいところは、この問題にいち早く向き合い、酒だけでなく技術者の育成にも乗り出していたことです。
酒造が技術者の育成を始めたのはなんと昭和63年、酒マイスターとして理系大卒者を中心に採用をはじめ、酒造技術者として育て始めました。
将来を見据えた早い対応が成功し、菊姫は現在に至るまで闇雲な生産ではなく、余裕のある酒造りを可能にしています。
同社の酒マイスターは、過去を伝承したうえで次世代の酒造りをしています。
日本酒文化そのものを今も守り続ける酒造の酒は、菊姫でなければならないという熱烈な支持者のもと、信念を持った酒造りを今も貫き通しています。
日本酒は無形文化財である、それが菊姫の信念です。

■頑固にこだわり抜いた菊姫 吟醸酒 菊姫吟醸 北陸限定

菊姫が北陸地区の直販店だけに卸す特別な限定吟醸酒、それが菊姫 吟醸酒 菊姫吟醸 北陸限定です。
ラインナップの中でも最もフレッシュであり、フルーティーな口当たりと芳香の中には辛さや柔らかな甘味があり、新鮮で若い力を感じられる逸品です。