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櫻井酒造の名を知らしめた代表銘柄

■ 創業時からの代表銘柄といえば
櫻井酒造の創業は1905年（明治38年）で、創業者の櫻井森右衛門が蔵を構えたのが、現在の鹿児島県南さつま市金峰町です。
櫻井酒造は自社のホームページを作っていないため、これまでの蔵の歴史や焼酎造りへのこだわり、苦労の末に生み出した銘柄のことなど、多くの蔵元が発信する情報を一切公開していないとあって、その歴史は断片的にしか知ることができません。
鹿児島をはじめとする九州地方各地には、焼酎を造る蔵元がたくさんありますが、その多くは家族経営で焼酎造りを行っている小規模の蔵です。
桜酒造の三代目となる櫻井弘之さんは夫婦2人での夫婦経営ですから、家族経営よりもまだ人手が少なく、ホームページを作ってまで宣伝しようとは思っていないのでしょう。
創業時から続いた代表銘柄に取って代わった上質の芋焼酎
創業以来、櫻井酒造にはさつま松の露という名の芋焼酎が存在しました。
その味のよさは地元では有名で、まさに地域に根差した銘酒だったことがわかります。
弘之さんは二代目から三代目を受け継ぐと決まった時点で、さつま松の露を県外にも販売しようとしましたが、すでに同じ名前の商標登録がされており、断念せざるを得ませんでした。
ただ、この出来事が弘之さんに櫻井酒造を代表する銘柄を造らねばと一念発起させたのは間違いないでしょう。
もしさつま松の露が全国に出回っていたとしたら、それに代わる銘柄は必要なく、次なる代表銘柄が生まれることもなかっただろうからです。
弘之さんの熱意から生まれたのが、櫻井酒造の名を冠した櫻井です。
代表銘柄は金峰町の名を取ってつけられた金峰櫻井ですが、そのほかにも黒麹で仕込んだ黒 櫻井や紅はるかを使って仕込んだ紅 櫻井も人気です。
金峰櫻井には白麹が用いられ、黒 櫻井はその名の通り、黒麹を用いて仕込んでいますので、金峰櫻井よりも強いコクがあるのが特徴です。
麹や原材料となる芋の使い分けが抜群に上手だった三代目・弘之さんの腕のよさと、蔵元として県外で勝負できる焼酎を造らなければという強い思いが、3つの異なる、それでいてすべてが上質な仕上がりの櫻井という代表作を生み出したといえるでしょう。

■ これから刻まれていく歴史
114年前となる創業時から代表作としてあったさつま松の露が、いったいどのように造られ、どんな味わいの焼酎だったかが歴史に埋もれてわからない櫻井酒造ですが、さつま松の露に代わって誕生した櫻井がこれからの櫻井酒造の歴史を刻んでいくのは確かです。
今や焼酎ファンにとっては、一度は飲んでみたい憧れの焼酎の一つとなっているだけに、この先、新しい櫻井が誕生する可能性は大いにあります。
ただ、創業からずっとさつま松の露を大切にしてきたことを考えると、現在すでに出来上がっている櫻井の名を持つ3つの代表銘柄のほかに、さらに銘柄数を増やすのではなく、これら秀逸な焼酎を絶やさないことの方が櫻井酒造のように小さな規模の蔵元にとって、より大切なことなのかもしれません。

■ 櫻井酒造の櫻井の最高峰はこれ
金峰櫻井（きんぽうさくらい）は、2019年で創業114年を迎える、大変長い歴史を持つ蔵元である櫻井酒造を代表する銘柄です。
創業以来場所を変えることなく南さつま市の金峰町で焼酎造りの蔵を守り続けてきたことから、金峰町の金峰に、蔵元の名である櫻井を組み合わせ、金峰櫻井と名付けました。
櫻井酒造の最大のこだわりとして、芋焼酎には黄金千貫でなければという思いがあることから、特に選りすぐった黄金千貫を用いています。
これに国産米の米麹を使い、仕込み水と割り水に金峰山の伏流水で作った白麹仕込み原酒と黒麹仕込み原酒をブレンドしているのが特徴です。
黄金千貫が持つ香ばしい芋の香りに、白麹と黒麹の原酒のブレンドという櫻井酒造ならではのアプローチによって、芋焼酎にありがちな雑味がないソフトな味わいは、焼酎ファンなら誰もが絶賛する逸品となっています。