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焼酎ファンには大いに知られる存在

■ 大正11年創業の酒蔵を持つ酒店
焼酎ファンには知られた存在である万膳酒造は、大正11年に創業した際に酒の製造免許を取得し、蔵で焼酎を造っていました。
現在は蔵と酒店の両方があり、万膳酒店の店主を務めるのは創業者から見て孫にあたる万膳尚幸さんです。
尚幸さんが生まれたとき、万膳酒造には酒店しかありませんでした。
創業者である尚幸さんの祖父が他界したとき、尚幸さんの父・利弘さんはわずか10歳、とても蔵の経営を引き継げる年齢ではなかったのです。
万膳酒造は蔵をなくし、万膳酒店として酒を売るだけになることを余儀なくされました。
利弘さんにとって10歳で父親を亡くすということ自体、大きなショックだったのは間違いなく、さらに生まれたときからあった万膳酒造の蔵がなくなってしまったことに対するショックもまた、幼い心に感じていたのではないでしょうか。
現在、万膳酒店の店主を務める尚幸さんの子供のころの記憶には、朝から晩までひっきりなしにお酒の配達をする両親の姿しかないといいます。
万膳酒造は蔵での製造をやめたわけではなく、休業状態だったため、利弘さんにはいつか蔵を再開したいという思いがあり、それが夫婦揃っての朝から晩までの懸命な配達だったのでしょう。

■ 万膳酒造の再開
万膳酒造が蔵での焼酎造りを断念せざるを得なかった酒店経営の間に、今やプレミアム焼酎として知られる「村尾」の村尾酒造や「魔王」の白玉醸造、さらに「なかむら」の中村酒造に「伊佐美」の甲斐商店など、多くの有名焼酎蔵元とコネクションを作っていました。
焼酎造りを再開するまでの間、万膳酒店として生き残ってこられたのは、両親の頑張りによってこれら有名蔵元とのつながりが出来上がったことも、大きな要因だったでしょう。
万膳酒造での焼酎造り再開にあたって、父親の利弘さんとともに蔵に入ったのは尚幸さんの弟の博幸さんで、博幸さんが製造を、尚幸さんが小売をといった具合に分業して家業に取り組んでいます。
父と2人の息子によって万膳酒造は復活し、萬膳という名を冠した焼酎は、プレミアム焼酎に負けぬ上質な焼酎として再び世に出回ることとなったのです。
尚幸さんは自分自身は蔵に入るには向いておらず、ひたすら蔵をサポートしながら、出来上がった萬膳はもちろん、萬膳以外のあらゆるよいお酒をPRしながら小売店経営を担当しています。
万膳酒造として再開したら、どうしても萬膳を押したいところでしょうが、それをせずによいものをいろいろ勧めるという尚幸さんの姿勢が、今も取引先との関係を良好にしているのでしょう。

■ 蔵人の大変さを知っているからこその頑張り
尚幸さん自身、蔵に入って焼酎造りをしていますので、その大変さを肌で知っています。
朝の4時半には蔵に入り、長時間にわたって作業を続ける蔵人の仕事は非常に重労働です。
とても自分には向かないということで小売業を担当していますが、焼酎が蔵人たちの大変な苦労から生み出されることを誰よりもわかっているからこそ、萬膳はもちろん、ほかのお酒もよいものはどんどん勧めるのかもしれません。
蔵人の思いが詰まっているのがお酒なのだから、萬膳でなくても飲んでもらいたいという尚幸さんの気持ちは、小売店として存続できたことによって復活した万膳酒造にとっては、多くの蔵元や酒を造る人たちへの感謝の気持ちともいえそうです。

■ 熟成期間は短くても良質だからこそ上質の味わいに
萬膳 霧島山中 三年貯蔵は、黒麹仕込みで造られる萬膳の中でも3年以上熟成させた至高の逸品です。
すでに終売となっているだけあって、その希少価値の高さにしばしば注目が集まります。
蒸留酒である焼酎は熟成が必要ですが、3年以上で古酒になることから、熟成期間はウイスキーやブランデーなどと比べると短いのが特徴です。
たった3年なのに香りや風味が安定し、おいしさが増してくるのが焼酎の特徴です。
熟成を経ることによって生まれるまろやかな味わいと独特の風味は焼酎ならではのもので、特に萬膳 霧島山中 三年貯蔵に関しては、原材料のさつまいもや黒麹、仕込水に徹底的にこだわっているため、独特の香りとまろやかな味わいが堪能できます。
ロックやストレート、水割りがそのおいしさをよりしっかり味わえる逸品です。