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皇帝に捧げたブドウと同じ畑で造られたシャンパーニュ

■ 類を見ないシャンパーニュ・メゾンの誕生
776年、歴史的にはアメリカ独立宣言が採択された年に、デュボワ親子がシャンパーニュ地方にメゾンを創設します。
のちにニコラ・シュレッダー氏が買い取ったこのメゾンこそ、世界的に有名なメゾン「ルイ・ロデレール」の母体となりました。
ニコラ・シュレッダー氏はこのメゾンの経営を、1833年に甥のルイ・ロデレール氏に譲ります。
当主となったルイ・ロデレール氏は自社の畑で原材料となるブドウを栽培することに着目し、1845年にはヴェルズネ村のグラン・クリュを15ha獲得することに成功します。
もともと経営に優れた才を持つルイ・ロデレール氏でしたが、彼は本気でワイン造りに取り組み、栽培から出荷に至るまで自社で行うスタイルに強くこだわりました当時のメゾンはワインを造るのみで、原材料となるブドウはほかの畑から買って仕入れるのが一般的でしたが、彼は土からワイン造りを始めることを決めたのです。
グラン・クリュ＝特級畑を厳選して獲得できたのは、彼が区画ごとに緻密に土壌の特徴を分析し、熱い情熱を持って研究を続けた成果がありました。
ルイ・ロデレールのシャンパーニュはオリジナリティあふれる魅力的な味わいを持ち、19世紀半ばにはグラン・クリュを複数所有する名の通ったメゾンに成長しました。
1870年には息子のルイ・ロデレール2世が経営を継ぎ、父の教えと天賦の才のもと、よりきめ細かやなシャンパーニュ造りに全力を注ぐことになります。

■ ロシア皇帝に捧げられたクリスタル
1873年頃には、ワインの輸出に力を入れ始めます。
主にアメリカとロシアが取引先でしたが、とりわけロシアで高い評価を受け、ロシア皇帝アレクサンドル2世から大変愛されるシャンパーニュとなります。
ルイ・ロデレール2世がこのとき皇帝のために造ったシャンパーニュが、メゾンを代表するプレスティージュ・キュヴェ「クリスタル」です。
クリスタルグラスにボトリングされたことからこの名が付きましたが、このとき生まれた卓越した比類なきシャンパーニュは、今も揺るがない最高級評価を受けています。

■ 荒れた畑からブリュット・プルミエを
第1次世界大戦が終わった1920年代、戦争のためにブドウ畑は荒れ地と化していました。
この再生に取り組んだのが、レオン・オルリー・ロデレール氏です。
1880年、 ルイ・ロデレール2世は妹であるレオニー・オルリー・ロデレール氏に当主を引き継ぎますが、その後当主となるのが息子のレオン・オルリー・ロデレール氏です。
彼は荒れた畑を再生するだけでなく、収穫年が異なるブドウをブレンドしてバランスを安定させるブリュット・プルミエのベースを築きます。
彼の生み出した優れた技術は、のちに複数のヴィンテージをブレンドして最高のクオリティを再現する技術の礎となりました。
荒れ果てた畑で苦心の末培われた繊細なブレンド技術があったからこそメゾンは息を吹き返し、現在に至る大きな復興を遂げたのです。

■ 240年以上続く家族の絆
レオン・オルリー・ロデレール氏が亡くなった後、未亡人となったカミーユ・オルリー・ロデレール氏が1975年まで経営者となります。
その後、カミーユの孫のジャン・クロード・ルゾー氏が社長に就任し、このときにメゾンはまた大きく発展します。
ジャン・クロード・ルゾー氏は醸造学を修得した経営者であり、シャンパーニュ業界では珍しいダイナミックな手腕で経営を発展させます。
そして現在当主を務めるのは、ジャン・クロード・ルゾー氏の息子、フレデリック・ルゾー氏です。
家族の絆はシャンパーニュで紡がれ、今も変わらず息づいています。

■ クリスタルと同じ畑で造られたルイ・ロデレール ブリュット・ヴィンテージ 1999
ブリュット・ヴィンテージ1999は、ルイ・ロデレールの代表作、クリスタルと同じ畑のブドウを100％用いて造られたヴィンテージ品です。
生産本数はごくわずかなので幻ともいわれますが、その品質はまごうことなく、素晴らしいアロマを醸しています。
めったにお目にかかれる品ではありませんが、ルイ・ロデレールの最高級の味わいに出会える逸品であるのは間違いありません。