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なかなか手に入らないアードベッグ 17年

■ 入手困難なアードベッグ 17年
アードベッグ 17年はアードベッグのファンの間でも入手困難とされているアイラモルトの一つです。
有名な老舗ホテルのバーなどで常連客にひそかに提供される程度で、買取専門店などでもめったにお目にかかれません。
なぜ、入手困難かというと、それはアードベッグ蒸留所の歴史にも大きく影響を受けています。

■ 一度姿を消した蒸留所と復活の歴史
アードベッグ蒸留所は1815年にマクドゥーガル家によって、アイラ島南部の海沿い、大西洋の波に洗われる岩の多い小さな岬に設立されました。
アイラ島の蒸留所はいずれも海辺に位置し、専用の桟橋を持っているのも特徴的でした。
そこでは、クライド社のポンポン船が蒸留所で使う石炭を運び込む代わりに、製造されたウイスキーの樽を積んでグラスゴーへと戻っていくという光景が見られました。
アードベッグはピート香が強く、辛口とスモーキーな味わいを特徴とするアイラモルトの中枢を担うウイスキーです。
古くから熱狂的に支持されてきたアイラモルトでしたが、しばしば、蒸留所閉鎖の危機に見舞われ、1980年代には閉鎖を余儀なくされたこともありました。
蒸留所が休止されたあと、グレンモーレンジィ社が買収してアードベッグ蒸留所を傘下に収めたことで、1997年に満を持して復活を遂げます。
もっとも、約10年以上にわたって原酒が作れない時期があったうえ、当時、出回っていた熟成酒は、もはやアードベッグのウイスキーは飲めないと考えたファンたちの手で買い占められました。
そのため、17年もの熟成期間を経たアードベッグはあまり出回っていないのです。
この先は少しずつ新たな17年ものが出てくるでしょうが、まだまだ数は少なく希少です。

■ 自前の製麦施設と豊かな水源に恵まれた蒸留所
アードベッグは自前の製麦施設まで保有している、由緒ある蒸留所です。
アードベッグにはワインに近いコクがあるのが特徴で、熟成するにしたがって豊かなシェリー酒のような甘みが深まり、より泥臭い味わいを楽しむことができます。
この芳香や味わいは、数多くあるほかのアイラモルトにはない特徴だと言われています。
この芳香や味わいを生み出しているのが、近くのポート・エレンで栽培されているアードベック専用の麦芽で、業界で最もピート燻蒸度が強いという面白い特徴があります。
また、仕込みに使用される水も他の蒸留所とは違っています。
アードベッグが復活を遂げる少し前の1995年には、アイラ島で日照りが約100日間も続いたことがありました。
地域の水ガメが枯れ果てる中、アードベッグの水源になっている湖だけは不思議と枯れることはありませんでした。
常に25万トンものの水が確保されている状態だったのです。

■ アイラ島の風土とこだわりのスチルが育む独特のモルト
アイラ島は基本的に極端な気候の変化が少なく、霜もおりなければ、雪も降ったことがありません。
もちろん、悪天候に見舞われることや海に面しているので時速112kmに及ぶ強風も珍しくはありませんが、おおむね温暖な気候が維持されています。
この風土や気候がウイスキーの熟成を促進するのに重要な役割を担っているのです。
そのため、アイラ島は小さな島でありながら、古くから世界最高級のシングルモルト・ウイスキーを生み出す場所として偉大な名声を獲得してきました。
そんな世界から愛されるアイラ島のモルトの中でもアードベッグに独特の特徴があるのは、ピート燻蒸の度合いやスチルの大きさ、形が異なっているためです。
アードベッグ蒸留所のスチルは容量が大きいのに、背は低くずんぐりしているのが特徴です。
蒸留所の所長であるイアン・ヘンダーソンによれば、背が高くて痩せ型のスチルは軽いウイスキーに向いており、アードベッグのようなスチルはヘビータイプの濃厚なモルトづくりに最適だと言います。
アードベッグ17年もかすかな甘みを堪能しながら、アフターテイストにピートのスモーキーフレーバーの余韻が楽しめます。