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ローマ神話の双面神が見守るアランの未来

■幻のアランモルト ミレニアムカスク

アランウイスキーは、スコットランドの美しい島、アラン島から発信されているウイスキーです。
ウイスキーファンの心を惹きつけてやまない魅力ある酒づくりを続けるアラン蒸溜所は、実は1995年から始動した新しい蒸溜所というのは意外かもしれません。
開いたのはシーバスブラザーズ代表も務めたハロルド・カリー氏で、彼が夢見た自分だけの蒸溜所が形となったものです。
長年ウイスキー業界で粋を極めた人物が、培った己の経験をつぎ込んで造り上げたものですから、その思い入れは相当なものでしょう。
スコットランド本土には適した場所がなかったため、アラン島に目をつけ、夢を実現したものです。
まだ若いブランドということにはなりますが、当然そのバックボーンは素晴らしく、スコットランドで最高の蒸溜所という声も聴かれるクオリティを誇ります。
そんなブランドがミレニアムに手掛けたのが、アランモルト ミレニアムカスクです。
その数量はわずか7,800本ですから、幻と言われるのも納得でしょう。
実物を目にしたことのある人は、かなり幸運の持ち主と言えるかもしれません。

■双面の神が見守るものは

アラン蒸溜所が発信するウイスキーは常に多くの人を魅了しますが、アランモルト ミレニアムカスクはその佇まいでも非常に目を惹きます。
ギフトボックスを開くと、ミレニアムカスクを中心に、左右にローマの神であるヤヌス神の横顔がそれぞれ線画で描かれています。
ヤヌス神は始まりと終わりとを司る神で、出入り口と扉の守護神とされています。
前後に二つの顔を持つ姿で、物事の内側と外側とを同時に見る能力を有します。
1月の守護神でもありますが、アランモルト ミレニアムカスクは1999年12月31日と2000年1月1日にフィリング（樽詰）したカスク（樽）を45樽選出し、カスクストレングスでボトリングしました。
まさに過ぎ行く年と来たるべき年をそのままボトルに注いで封じ込めたような、歴史ある1本となったわけです。
ヤヌス神が見守っているのは、アラン蒸溜所の過去と未来、そしてウイスキーそのものの過去と未来なのかもしれません。

■一度は途絶えた歴史がつむがれた証

アラン島のロホランザ村に蒸溜所はありますが、1837年に最後の合法蒸溜所が閉鎖されてから、アラン蒸溜所が開設されるまではスコッチウイスキーの製造は歴史上途絶えていました。
有数の大手メーカーでマネージングディレクターを務めていたハロルド・カリーが動き出さなければ、このアランモルト ミレニアムカスクも生まれることはなかったでしょう。
一度途絶えた歴史が再びつながったのは、158年の年月を経た後のことです。
アラン蒸溜所のこだわりはシングルモルトであることで、純粋なモルトだけを味わうために造られたウイスキーがアランウイスキーです。
オプティックという大麦麦芽とイーサンビオラック川を流れる湧き水で造られた、美しい自然の味わいがその中に生きています。
アランモルト ミレニアムカスクの中にも、もちろんこうしたアラン島の自然そのものが詰め込まれています。
一度は途絶えてしまったスコッチウイスキーの歴史もまた、その中にしっかり息づいているのでしょう。

■紛れなくアランを代表する1本

ミレニアムに厳選された45樽のカスクは、バーボンバレル35樽がベースとなっており、シェリーホグスヘッド10樽がプラスされています。
カスクはウイスキーの命と呼べる重要アイテムですが、ミレニアムに相応しい明るい色と華やかな香りを与えてくれた個性豊かなカスクたちは、これからのアランの未来も彩ってくれるでしょう。
味わった人々は口々に、アランの中でも格別、特に好みの味わいと高い評価をつけています。
ボトルがとてもスタイリッシュで、オレンジ色に近い明るいカラーに目を惹かれます。
余韻ある甘い香りと濃厚なボディは、大人に甘美なひと時と夢を与えてくれるご褒美と言えるかもしれません。