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■粗い酒を洗練したドン・ファクンド・バカルディ
バカルディは世界最大のラム酒のブランドと言えます。
ブランドの設立は1862年と古く、スペインのワイン商ドン・ファクンド・バカルディがその歴史をスタートさせました。
ドン・ファクンド・バカルディは、スペインからキューバサンチャゴへ移住します。
ワイン商だった彼は、現地の人もほとんど飲まなかった当時のラムを、品質の高い酒に昇華させることに人生を注ぐことになりました。
当時のラムは非常に粗く、品質の悪いものだったと言います。
そこで彼は蒸留したラムをチャコールろ過するという独自の方法を編み出し、熟成させてブレンドすることで洗練された味を作ることに成功しました。
彼の造るスムースな味わいのラムは、当初自家用に作っていたところから瞬く間に周囲の高い評判を得ることになります。
そこで彼は小さなトタン屋根の蒸留所を買い取り、会社を設立することになったのです。

今では当然のごとく行われているチャコールろ過は、実は世界で初めて、必要に迫られたドン・ファクンド・バカルディが発明したものだったわけです。

■あまりにも有名なカクテルベース
バカルディは、世界中のバーテンダーから無くてはならないと言われるほど、カクテルベースに愛用されているお酒です。
有名なキューバ・リブレもバカルディをベースとしたカクテルですが、バカルディとコークで作られたこのカクテルには、印象的なエピソードがあります。
1898年、キューバはスペインからの独立を勝ち取りました。
その時に独立を支援したのがアメリカで、一緒に戦ったキューバ兵士とアメリカ兵士とがハバナのバーで勝利を祝っていた時のことです。
一人のアメリカ人将校が、キューバの地元で愛されているバカルディにアメリカから来たコーラを合わせ、ライムを絞って飲んだのが歴史的カクテルの誕生の瞬間です。
これがバカルディ・アンド・コークの始まりで、そこにいた兵士たちがたちまち気に入り、キューバ・リブレ（キューバよ自由なれ）と叫んだことでこの愛称が付いたと言われます。
また1896年には、キューバの鉱山で働いていたアメリカ人技師のジェニングス・コックスが暑い夏の日、バカルディ・ライト・ドライに砂糖を入れ、ライムを絞って冷やして飲んだのがダイキリの始まりです。
なぜこの名になったかと言うと、コックスが働いていた鉱山の名前がダイキリだったからだと言われています。

そして、ダイキリと言えば忘れることができないのが、作家ヘミングウェイです。
ヘミングウェイはハバナにあるエル・フロリディータというバーにいた伝説のバーデンダー、コンスタンテ・リバライグァの作るダイキリを毎日飲んでいたと言われています。
彼は自分の小説の中でもこのカクテルを絶賛し、伝記の中で紹介されているダイキリのレシピにも、もちろんベースはバカルディだと明記されています。

■真似ては造れない特別なテキーラ
バカルディの歴史の中で最大の危機は、1959年のキューバ革命です。
社会主義政権によって接収されたバカルディの蒸留所は、その後政府が同じようにラムを生産し、輸出で外貨を稼ごうとしますが、まったく上手くいかず失敗に終わります。
バカルディはブランド名とレシピとともにキューバを脱出し、以前から置いていた海外の拠点に活動の場を移し、現在では再びプレミアム蒸留酒No.1 を獲得するまでに復活を遂げています。
19世紀にドン・ファクンド・バカルディが生み出した味わいは、真似た物を造ろうとする度に失敗し、その味に近づくことは誰にもできてはいません。
世界のバーテンダーがこだわり、バカルディがこの世から無くなっては困ると言う理由は、そうした唯一無二の存在であることを物語っています。

■絶対に外せないスタンダードはバカルディスペリオールホワイト
歴史あるバカルディのスタンダード中のスタンダードと言えば、スペリオールホワイト750mlです。
シンボルマークはご存知の通りバット・デバイスですが、世界のどのバーに行っても必ず置いてあると言っても過言ではないでしょう。
バーテンダーが絶大な信頼を寄せ、No.1 ラム酒の座を揺るがぬものとしています。
スッキリとしたホワイトラムは、もちろんそのまま飲んでも素直で美味しい味わいですが、やはりダイキリやモヒート、コークと合わせたカクテルでもぜひ楽しみたい逸品です。