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■30年熟成の伝統と重みを感じる
バランタイン３０年 ベリーオールドはなかなか見かけることがない30年以上の熟成ものですが、稀に高級バーやレアな酒を扱うお店で見かけることができます。
1960年や1970年代に販売されたものが、今の時代に手に入るということは非常にレアといえます。
1970年代の販売ならその原酒が蒸留されたのは1940年代、1960年の販売なら1930年代から熟成されたものが詰まっているわけです。
バランタインは1827年創業の老舗で、中でも最も有名な銘柄にバランタイン17年があります。
これが誕生したのが戦前の1937年のことで、翌年の1938年にはダンバードングレーンウイスキー蒸留所が建設され、ボトルのラベルにも貼られている紋章の認可を受けるなど、バランタイン社にとっても記念すべき時期にあたります。
1970年代に発売されたバランタイン３０年 ベリーオールドは赤青紋章ラベルで、1960年代のものは赤白紋章ラベルという特徴もあります。
ボトルの流通が1968年以降であれば、グレーン原酒はダンバードンの初期の原酒など、蒸留所の違いなども年代によって予測することができます。
このように30年以上熟成されたベリーオールドは、ラベルに書かれた年代をもとにバランタイン社の歴史を辿って、そのウイスキーが何処でどんな風に造られ、どんな時間を過ごしてきたのかに想いを巡らせる楽しみも味わえます。

■発売から30年前の歴史をたどる
1937年はバランタインの創業者であるジョージ･バランタインが世を去ってから、約50年経った時期にあたります。
バランタイン社の経営を引き継いだジェームス･バークレーとマスターブレンダーのジョージ･ロバートソン、ウイスキー研究の専門家であり同社の同志であったジェームス･ホーンの3人は、ずらりとテイスティンググラスが並んだオーク張りのテイスティングルームでテイスティングを重ねていました。
彼らは貯蔵庫に眠る優れた原酒を贅沢にブレンドした、究極のブレンデッド･スコッチづくりを行っていたのです。
年代の異なる原酒サンプルのテイスティングを行い、各モルトが完璧に熟成する酒齢を慎重にモニタリングした結果、究極の年代ものスコッチとするためには、17年以上の熟成原酒がベストという1つの答えを見出します。
この3人の見識と技、努力によって、酒齢17年以上の原酒をブレンドしたバランタイン17年が誕生したのです。
バランタイン３０年 ベリーオールドはそのさらに倍近い時間を経たウイスキーであり、究極のバランタイン17年の中でも最高グレードといっていいでしょう。

■バランタイン３０年 ベリーオールドが生み出される熟成プロセス
ウイスキーは熟成による時の流れの中で深みと洗練を増すものです。
樽に抱かれて眠り続ける長い歳月を経ることで輝くような琥珀色と豊かな芳香が生まれ、まろやかな味わいが生み出されて行きます。
若くトゲやクセのあるウイスキーが深く甘美な味わいをまとうには、蒸溜所内の空気と樽材の性質が大きな影響を与えます。
熟成の間に樽は気温の変化によって夏は膨張し、冬は収縮を繰り返し、１日の気温の変化でも膨張と収縮を繰り返して呼吸を続けています。
長い年月をかけて呼吸を繰り返すことで、蒸留所内にある空気、つまりバランタイン蒸留所がある場所のかすかな潮風や霧雨なども含めて樽材の成分と一緒に原酒にゆっくりしみ込んでいきます。
この営みを経ることでウイスキーの色や香りをはじめ、味わいや原酒ごとに異なる個性を身に着けていきます。
オーク樽の気孔は外部から空気を吸い込んで呼吸するだけでなく、逆に樽の中から微量のウイスキーを外に排出していきます。
1年でウイスキーの全量の約2％が蒸発していくとされており、熟成が進むほど、年月が経過するほど樽の中の原酒の量は減っていくのです。
これを天使の分け前と呼んでおり、貯蔵庫内では顔を赤くした幸せな天使たちが舞っていると古くから言い伝えられています。
バランタイン３０年ベリーオールドは天使の分け前もたっぷりとられた、天使が喜ぶウイスキーでもあります。