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スコッチと起源を争う悠久の歴史を誇るアイリッシュウイスキー

■パリ万国博覧会で金賞を獲得

１８８９年にフランスの首都パリで開催された「パリ万国博覧会」は、同地で４回目となる国際博覧会で、フランス革命１００周年を記念して開催されました。
開催期間は１８８９年５月６日から１１月６日の半年間で、その間の入場者数は約３,２３５万人と言われています。
この博覧会の目玉として建てられたのが、今ではパリを代表する名所であり、フランスのシンボルにもなっている「エッフェル塔」です。
シャン・ド・マルス公園を見渡すことができるランドマークタワーとして圧倒的な存在間を放つエッフェル塔は、１９９１年に近くを流れるセーヌ河岸として世界遺産にも登録されましたよね。
エッフェル塔がモニュメントとして建設された１８８９年の万国博覧会にも、世界各国から出品されたさまざまな物品や資料が一般公開されました。
同年のコンペティションでは、オランダのビールメーカー「ハイネケン」がグランプリを受賞したほか、ルイ・ヴィトンの代表的なデザイン「ダミエライン」や京都生まれの日本画家「久保田米僊」などが金賞に輝いており、数多くのウイスキーが出品された中で唯一、金賞を受賞したのがアイリッシュウイスキー「ブッシュミルズ」だったのだとか。
アイルランド世界最古の蒸留所とされる貫禄と伝承されたウイスキー製法が世界に認められた瞬間でした。

■アイルランドに伝わるこだわりのウイスキーづくり
アイルランドの経済において重要な役割を占めるアイリッシュウイスキーは、「アイリッシュ・ウイスキー法」で定められた条件を満たしたものにのみアイリッシュウイスキーと名乗る権利が与えられます。
その条件とは、まず原料に穀物類を用いること、大麦麦芽に含まれる酵素（ジアスターゼ）で糖化を行うこと、酵母の働きで発酵を行うこと、原料由来の香りと味を引き出すためにアルコール度数９４.８％以下で蒸留すること、７００リットルの容量を超えない木樽で貯蔵・熟成すること、そしてアイルランドや北アイルランドの倉庫で３年以上熟成させることとなかなか厳格な規定となっています。
これらの基準をクリアしたアイリッシュウイスキーは、ライトな酒質で雑味が少なくマイルドな風味を最大の特徴としています。
ウイスキーに飲み慣れていない初心者の方でも、「フルーティー」で「飲みやすい」という印象を持つのもアイリッシュならでは。
未発芽の大麦やモルト、トウモロコシ、オーツ麦、ライ麦といった穀物原料を粉砕して糖化し、酵母を加え、雑味を飛ばすために３回蒸溜を行うというアイルランドの伝統製法を長い年月にわたり守り抜き、長い歴史に裏打ちされたアイリッシュウイスキーの魅力は近年に再評価され世界から脚光を浴びています。

■ブッシュミルズ蒸留所の歩み

アイルランド島の北端、冷たい海に面したアイルランド・アントリム州で現在まで稼働を続けているのがブッシュミルズ蒸留所です。
ブッシュミルズ蒸留所の歴史は１６０８年まで遡ることができ、４００年以上現役を続ける世界最古の蒸留所として知られています。
少し特徴的なネックが細長い銅製の小型ポットスチルでアイルランド伝統の３回蒸留を行い、アメリカンオークのバーボン樽、シェリー樽、ポートワインやマディラワイン樽、ラム熟成樽などさまざまな高品質の木樽を使って熟成しているブッシュミルズは、個性豊かで奥深い味わいのラインナップを世に送り出しています。
日本でも愛飲家が多いブッシュミルズには、１本２０００円前後で購入できるレギュラーボトルから最長７年熟成させた重厚な味わいが特徴のブラックブッシュ、クリーンな後味が好評な１０年、シェリー樽、バーボン樽、マルサラワイン樽を使って熟成させた複雑さが魅力の１２年、ポートワイン樽由来の濃厚な甘味が深みとパワフルさを紡ぐ１６年、滑らかでエレガントな舌触りを演出する長期熟成２１年など、クセがなく飲みやすい銘柄が揃っており、食中酒にもおすすめ。
アイルランドを発祥とするアイリッシュコーヒー以外にも、王道のストレートやロック、炭酸で割ったハイボールでもおいしくいただけます。