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革新を続ける名門中の名門ボルドー

■世界で最も濃縮感のあるワイン

かのロバートパーカーが「世界で最も凝縮感がある」「豊かでタニックなフルボディ」と高く評価したのが、五大シャトーの一つであるラトゥールのワインです。
非常に力強く、その味わいは男性的とされていますが、その名の由来となりラベルに描かれている「塔」＝ラトゥールは、海賊と闘うための要塞でした。
ボルドーの北西、メドックのポーイヤック南東端に位置するシャトー・ラトゥールは、五大シャトーの中でも名門中の名門とされます。
その名が文献に登場するのはなんと1331年と大変な古さですが、17世紀までは一画でブドウを栽培していた程度でした。
ワイン造りに本格参入したのは18世紀に入ってからで、シャトー・ラトゥールのワインは1714年には一般的なボルドーワインの5倍、1767年には20倍にもなる価格に跳ね上がります。
そのクオリティの高さは当時から別格だったことが伺えるエピソードでしょう。
特徴は抜群に安定したクオリティで、50年もの長期熟成が可能なうえ、真価を味わう至福は少なくとも20年、30年後とされることから、秀逸なヴィンテージワインの代表格といえます。

■ブドウ王子が所有したシャトー

ワイン造りがボルドーで始まったのが14世紀頃、ルネサンス期のフランスを代表する哲学者のミシェル・ド・モンテーニュが文献の中で絶賛したのが16世紀頃です。
17世紀後半になると、シャトー・ラトゥールはセギュール伯爵の所有となりますが、この人物はほかにもラフィットやカロンセギュールといった有名なシャトーも持っており、ブドウ王子という異名も持つワインの成功者です。
1718年には息子のニコラ・アレクサンドル・ド・セギュールが、1755年にはニコラの娘たちが分割して引き継ぎ、その間にも名声はどんどん上がり1787年には第1級ワイン畑に格付けされました。
フランス革命で資産が分割された際には農園はさらに分割され1841年まではバラバラに所有されていましたが、1842年に民法組合シャトー・ラトゥール設立にこぎつけ、ようやく一族が株主に落ち着きました。
評価を世界的に不動のものとしたのは、パリ万博前、1855年の格付けです。
ラトゥールは第1級ワインの一つに選ばれ、このときから世界でラトゥールの名声が確実なものとなったのです。

■時代を切り拓く革新のシャトー

シャトー・ラトゥールは、確かに長い伝統と歴史を誇るシャトーです。
ただし、伝統を守り続けるクラシックなシャトーというイメージとはかけ離れ、いち早く最新の設備や技術を取り入れた革新的なシャトーでもありました。
18世紀から本格的にワイン造りを始めますが、1963年からイギリスのピアソン財閥に経営されていた間、伝統保守から一転、最新のステンレスタンクを導入し、設備を一新させたのです。
メドックでは初となるこの試みは、周囲からは疑心暗鬼の目で見られました。
果たして伝統的な木製桶からステンレスに発酵槽が変わったことで、ワインのクオリティが保てるのかという疑念です。
ボルドーワイン界は伝統を重んじる風潮がありますので当然の反応ですが、シャトー・ラトゥールはこの最新技術の導入を大成功させました。
今日あるボルドーワイン界への道を歴史の舞台で切り拓いたのは、シャトー・ラトゥールであると言って過言ではないでしょう。

■シャトー・ラトゥール 2009年

シャトー・ラトゥールは2000年にも莫大な資金を投じ、大々的な改修を実施しました。
常に最新の醸造施設であり続けること、最新の貯蔵施設であり続けることを目指し、決してトップの地位に甘んじることなく改革を続けています。
そんな革新を続けながら生み出す味わいを常に安定させ、非の打ち所がないパーフェクトなワインを造り続けることは簡単なことではありません。
そうした革新と挑戦の中、誰もが知るグレートヴィンテージである2009年が訪れました。
もともと「年月が経つにつれ良くなる」と評されるメドック格付け第一級のシャトー・ラトゥールですから、当たり年ワインでまず外すはずがありません。
豊富なタンニン、濃厚な凝縮感、そのシャトーのパワフルさを存分に味わえるフルボディは、ワイン通でなくともぜひ堪能したい逸品です。