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■歴史が浅い中で絶賛されたワイン
シャトー・ル・パン（Chateau Le Pin）は、フランスボルドーのポムロール地区にある非常に有名なシャトーですが、その歴史は決して古くはありません。
はじまりは1979年にティアンポン家が隣の小さな畑を購入したことですが、ティアンポン家はすでにヴィユー・シャトー・セルタンのオーナーでした。
ベルギー系のティアンポン家は1924年の革命前からヴィユー・シャトー・セルタンを所有していましたが、この年に隣接する小さな畑をマルセルとジェラールという兄弟が購入します。
ただその理由がすさまじく、2世代も前の当主が遺言として、もしこの畑が売りに出たら買うようにと言い遺していたからというのですから驚きでしょう。
数世紀かけてようやくティアンポン家の土地となったわけですが、この畑は僅か2haしかない葡萄畑です。
でもその土壌の特徴を見極め、その個性を最大限に活かすために、ティアンポン家はあえて異なるシャトーを立ち上げ、ここにシャトー・ル・パンが誕生します。
ちなみにル・パンというのはフランス語で松のことで、畑の中にぽつんと松の木が立っていたことからこのように名づけられたのでしょう。

■シャトー・ル・パンの名を世界に轟かせた人物
現在、ヴュー・シャトー・セルタンの当主はアレクサンドル、シャトー・ル・パンの当主は従妹のジャックが務めています。
このジャックこそが、シャトー・ル・パンの名を世界に轟かせた立て役者です。
彼は偉大なまでの豊かさと荘厳さを兼ね備えたワインを理想とし、現代の味覚に合う最高のワインを創り出すことに情熱を燃やします。
他のポムロールワインとは一線を画すために手間暇をかけ、樽もオークの新樽を採用するなど努力を重ねた結果、果実香と樽がマッチングしたゴージャスで官能的な魅惑のワインが完成しました。
その名こそがル・パンです。
今ではボルドーを代表する超高級ワインですが、メルローの厚み、深み、力強さを存分に持つ豊潤なこのワインは、冒頭にも書いたように非常に小さな畑で生み出されます。
つまりは年間に僅か600ケース程度しか造られない非常に希少性の高いワインであり、ル・パンは幻の銘酒と呼ばれる名声を勝ち得ました。

■ガレージワインという新しい概念
ル・パンは世界に売り出され、同時に世界中の注目を一身に浴びました。
ここにガレージワインという新しい概念が創り上げられることになるのですが、ガレージワインというのは小さなワイナリーが特別な手間と時間をかけて造る極上の逸品のことです。
規模が小さいからこそ実現できる、当主の手間暇と強いこだわりが詰め込まれたワインと捉えればいいでしょう。
ジャックが造るのはわずか600ケースのワインです。
それでも一口それを味わった人の忘れ得ぬ感動が次々と伝播し、今では世界に注目される究極のワインとなりました。
人の心を掴むその魔力とも言える魅力と味わいで、すでに幻のワインとして有名になっています。

■ミッシェル・ロランとロバート・パーカーの存在
現在、醸造コンサルタントとして知らない人はいないミッシェル・ロランも、シャトー・ル・パンに深く関係しています。
若く無名だった時代に、彼はティアンポン家を訪れ、新樽を使うことや収穫量を抑えることなど画期的なアドバイスを行っていました。
1981年のファースト・ヴィンテージはリリースと同時に名声を得ましたが、もちろんこのことでミッシェル・ロランも一夜にして有名になりました。
ル・パンをボルドーで最も高価なワインの一つに押し上げたのは、確かにミッシェル・ロランの能力があってこそでしょう。
彼は売れるワインの作り方を考え、実践し、その功績を知られるようになったわけです。
そしてもう一人、神の舌を持つ男として有名なロバート・パーカーも深く関係しています。
彼はブランド力に左右されない姿勢を貫いていますが、評価基準とされているパーカーポイント（PP）は、なんと1990年リリースのル・パンに99点という高値をつけました。
この絶賛により、ますますル・パンの価値は高騰し、愛好家垂涎の的となったわけです。

■シャトー・ル・パン2000年ヴィンテージは偉大なワイン
いわゆる当たり年であるシャトー・ル・パン2000年は、偉大なワインという異名を持っています。
伝説のワインとさえ言われるほどのワインですが、その中でも芳醇な香りとコクがあり、果実味がしっかりしているパワフルな味わいは、まさに偉大と呼ぶに相応しいでしょう。
もちろん、ロバート・パーカーも大絶賛しています。
そうそうお目にかかれるものではありませんが、次元を超えたレアワインにお目にかかれる事があれば幸運でしょう。