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■ポムロールの最高級グラン・ヴァン
シャトー・ル・パンは、有名なボルドーワインの生産地ポムロールのワインでありながら、非常に神秘的なシャトーとして知られます。
というのも、生産量が極めて少なく、口にするのが難しい希少価値の高いワインだからです。
同時にワイン愛好家が一度は存分に味わってみたいと切望する、最高級グラン・ヴァン（偉大なワイン）でもあります。
星を掲げるようなトップクラスのレストランでは、シャトー・ル・パンのワインは置いておかないわけにはいかない究極の1本と言えます。
どうやってこの偉大な産物が生まれたのか、それは1979年に小さな畑が購入された時に遡ります。
畑を買ったのはベルギー系のティアンポン家ですが、ティアンポン家はすでにフランス革命以前から、由緒あるヴィユー・シャトー・セルタンを所有していました。
それなのになぜこの畑を買ったのか、それは単に隣接していたからというわけではなく、2世代前の当主が遺言として残していたからです。
それほどまでにティアンポン家が切望したこの土地は、数世紀かけてマルセルとジェラール兄弟のものとなります。
この時に、神秘のワインが生まれることを兄弟が予見していたかどうかは定かではありません。
ただ、この小さな土地が持つ個性を生かすために、あえてヴィユー・シャトー・セルタンには取り込まず、新たにシャトー・ル・パンを立ち上げたのは確かに運命かもしれません。
これがシャトーとしてはさほど長い歴史があるとは言えないシャトー・ル・パンが、世界中から切望される超高級ワインを作り出す序章となりました。

■2haしかないブドウ畑が究極を生み出す
シャトー・ル・パンのワインを世に知らしめることになったのは、当主のジャックが偉大で豊かで荘厳なワインを作ることを目標としたことも深く関係しています。
彼はこの2haしかない小さなブドウ畑を、超希少な高級ワインを生み出す宝の土地にするために、あらゆる工夫と努力を行います。
結果、マロラクティック醗酵にオークの新樽を使用し、手間をかけることで他のポムロールワインとは異なる魅惑的なワインを作ることに成功しました。
そしてこの方法を提案したのは、現在世界で引っ張りだこの空飛ぶワインメーカー、ミッシェル・ロランです。
彼は今でこそ超有名な醸造コンサルタントですが、シャトー・ル・パンが立ち上がった頃、若く無名な彼はティアンポン家を訪れ、どのようにすれば価値あるワインを作れるかアドバイスを行っています。
狭い畑だからこそ収穫量を絞って最高のブドウを作る、そして新しい樽を使い、焦がし加減を工夫して今までになかった風合いを醸す、そうした試みをティアンポン家が受け容れ、これが最高のワインへとつながりました。
まさに情熱と才能のケミストリーと言えるでしょう。

■シャトー・ル・パン2010年の官能
シャトー・ル・パンのワインは、その果実香とゴージャスで魅惑的な個性で、官能的とまで評される逸品です。
華やかでエキゾチックな魅力がありますが、その評価を不動にしたのがアメリカのワイン評論家、ロバート・パーカー氏です。
彼はブランドや価格に一切左右されずワインを評し、客観的に点数をつけるパーカーポイント（PP）で世界のワイン相場に絶大な影響力を誇ることで有名です。
神の舌を持つと言われる彼は毎回100点満点でPPを示しますが、1990年にリリースしたル・パンについた点数は、なんと99点という奇跡の点数でした。
その後シャトー・ル・パンのワインが世界中でこぞって最上の評価を得る至高の赤ワインとして君臨したのは、言うまでもないことです。
ポムロールはミネラル分が豊富で水はけが良く、ワインには芳醇な香りとコクが感じられますが、その中でも当たり年と言われる2010年ヴィンテージは格別な味わいを持ちます。
もちろんこの年のシャトー・ル・パンは絶品で、一生に一度は飲みたい高級ワインと言えるでしょう。