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日本一話題の日本酒は日本一奇想天外な製法から生まれているという事実

■危機に直面したからこそ酒造りを大胆に変えた旭酒造株式会社
旭酒造株式会社は、山口県岩国市にある小さな酒造会社でした。
小さなというと、小さくても堅実に経営している蔵元というイメージがありますが、旭酒造株式会社を引き継いだ三代目は、会社がまさに経営の危機に瀕していることを知り、愕然とします。
そこでまず取り組んだのが、酒造会社として酒造りを変えることでした。
これまで販売していたのは「酔えればいい」という安い普通酒でしたが、これを作るのを完全に辞めてしまう決断をします。
その上で行った改革は、醸造アルコールさえも使わない、純粋にお米だけを使い、さらには精米歩合が高く、贅沢にお米を使う純米大吟醸だけを作るという発想の転換だったのです。
おそらく、そのときに旭酒造株式会社で酒造りをしていた杜氏は、お酒の売れ行きのことを知っていたはずですから、三代目のこの考えをまともではないと受け取ったことでしょう。
とはいえ、三代目はいたって大真面目で、日本酒離れが加速している中、普通のお酒を作っても売れるはずがないという確信がありました。
しかも、日本酒の売上を回復させるためには、これまでの顧客にしがみつくのではなく、新しい顧客を開拓する方が効率がいいという考えも持っていました。
三代目を継いだ当時、まだ34歳と年齢が若かったことも、新しいことへの挑戦を大いに後押ししたと言えます。

■日本酒の作り方を画期的に変換させた功績
普通酒は造らず、本当に美味しいお酒といえる純米大吟醸酒だけを作るという考えのもと、三代目は杜氏と一緒になって酒造りに取り組みますが、出来上がった酒は何とも言えないおかしなものだったと言います。
しかも、杜氏は三代目のあれこれと変えようとする手法に嫌気がさしたのでしょう、「もう来たくない」と言い出したのです。
三代目のすごいところは、「杜氏が来なくなったらどうしよう」と慌てふためくのではなく、それなら杜氏なしで酒を造ろうと思い立ったことでした。
そのために三代目が取り掛かったのが、徹底的なデータの収集です。
杜氏の経験と勘をデータにするという作業に取り掛かり、数値化することでいわゆる見える化を図ったわけです。
その結果、ついに杜氏がいなくても三代目が望む通りの上質な味わいのお酒が出来上がりました。
それが、今や日本中から熱い視線を集めている「獺祭」です。
米の吸水量は頻繁に軽量によって管理し、発酵状態に入れば毎日社員がデータを記録して分析を行いながら管理をしていますが、あえてそれを女性のパート社員にやってもらうことによって、全社員一丸となって酒造りに取り組んでいるという気持ちを社員に持たせることに成功しているあたり、三代目は人の動かし方も心得ているといえます。

■いろいろなお酒を生み出した三代目と社員たち
杜氏がいなくても酒造りはできるのだということは、データの管理はもちろんのこと、酒造りの基本であるもろみから圧搾するという方法ではなく、遠心分離機にかけ、無加圧状態で酒を分離して日本酒を作るという、これまでになかった、かつほかの酒造会社ではおそらくやっていないであろう製法によって、次々と新しいお酒を造り出すことで証明しています。
その作業のほとんどを三代目と社員が共に行っているということも、全員が結束して旭酒造株式会社の再生と、美味しいお酒を作るのだという強い決意を生み出したといえるでしょう。
今では様々な種類の「獺祭」がラインナップするまでになりましたが、中でも最高の酒米と言われる山田錦を三割九分まで精米歩合した「獺祭 純米大吟醸 磨き 三割九分」は、新鮮な味わいと柔らかで繊細な香りに加え、口に含んだ瞬間に感じるハチミツのような甘さが得も言われる美味しさを絶妙なバランスで体験させてくれます。
「獺祭」の基本となる純米大吟醸から順番に味わいつつ、磨きへとレベルアップすることで、よりいっそう「獺祭」の美味しさを味わう飲み方ができ、一番のおすすめと言えます。