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父と息子が築いた誇り高きブレンデッド・ウイスキー

■ジョン・デュワーの物語

デュワーズはアメリカで知らない人のいないスコッチ・ウイスキーのブランドです。
そのブランドの歴史は、創設者とその2人の息子の活躍を抜きにしては語れません。
1805年1月6日、デュワーズの創設者であるジョン・デュワーは、アバフェルディ郊外のシェナベイルに生まれます。
丘陵地にある農家の息子でしたが、ジョンはスコットランドの首都でもあったパースでワインとスピリッツの商売を行うアレックスマクドナルドの元で働きます。
そして1846年、41歳で独立し、自身の名を冠したデュワーズという会社を立ち上げました。
彼がブレンデッド・ウイスキーを造り始めたのがいつなのかは明確ではありませんが、当初は自社の蒸溜所を持たず、ほかから買い付けた原酒を使ってブレンドを行っていたことがわかっています。
それでも彼がすぐにブレンドの才能を開花させたことは明らかでしょう。
当時はワインとアイリッシュ・ウイスキーがブームでしたが、ジョンはどうしてもスコッチ・ウイスキー造りを手掛けたかったのです。

■2人の息子の物語

1879年、長男のアレクサンダー・デュワーと次男のトーマス・ロバート・デュワー（トミー・デュワー）が会社に入社、その翌年1880年に父のジョンはこの世を去ります。
現在社名は「John Dewar & Sons Ltd＝ジョン・デュワーと息子たち」となっておりロゴにも3人の名が記されていますが、実はジョンには10人の子供たちがいました。
その中でもこの2人の息子がその後類まれなる貢献をし、デュワーズの現在の地位を築いたことは間違いありません。
長男のジョン・アレクサンダーはブレンダーとしてその才能を大いに開花し、キーモルトを生産するため1896年にアバフェルディ蒸溜所を設立しました。
今あるデュワーズのブレンデッドの妙を築き上げたのは、紛れもなくジョン・アレクサンダーの功績です。
そして、そのブランドの名を世界に知らしめたのはトミー・デュワーの功績です。
トミーが父を失ったのはたった16歳のときでしたが、彼は見事なマーケティング手法で世界の心を掴み、ビジネスを大きく発展させたのです。

■世界のセレブリティに認められたデュワーズ

トミーの一番の功績は、世界を回る中で鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーと親交を深めたことでしょう。
カーネギーもまたスコットランドの出身でしたが、彼は事あるごとにアメリカ大統領にスコッチ・ウイスキーを贈っていました。
最初はジェームズ・ガーフィルド大統領の就任式、次が8年後のベンジャミン・ハリソン大統領の就任式ですが、ベンジャミン・ハリソン大統領がデュワーズを飲んだことからアメリカでは大ブームとなったのです。
実はアメリカ大統領がアメリカ製のバーボンではなく、スコッチ・ウイスキーを飲んだことは国内で批判の声もあったのですが、それでもデュワーズにはアメリカからの注文が殺到し始めました。
これを機にトミーは世界を巡回するデュワーズのセールスマンとしての人生を選び、1892年の出発からわずか2年で26ヶ国を訪れたことがわかっています。
彼の絶大なマーケティング力によりデュワーズの企業価値は劇的に上がりましたが、それはもちろん揺るぎないクオリティがあってこそ成し遂げられたものです。
ジョン・アレクサンダーのブレンド力はさらに磨かれ、1893年にはイギリスのビクトリア女王からロイヤルワラント（王室御用達）を勝ち取りました。
現在もロイヤルワラントを持つ蒸溜所は世界に3つしかありませんが、デュワーズはもちろんその一つです。
ブレンデッド・ウイスキーとしては最初の栄誉であり、それからずっとすべての君主から愛顧されてきた唯一のウイスキーブランドといえます。

■デュワーズ ネプラス ウルトラ 12年

デュワーズ ネプラス ウルトラ 12年は、銘柄通り至高の一本といえるデュワーズのフラグシップです。
当時でも貴重な最高級品でありながら、1980年代に流通した古いウイスキーであるため、現存数が極めて少ないボトルといえます。
熟成感高い香りとオレンジマーマレードのほろ苦さが特徴ですが、味わう前にまず出会うことが極めて難しい逸品です。
手書きを思わせるそのラベルに出会ったなら、何を置いてもまずは一杯、飲んでおくことをおすすめします。