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守るべきものと変えるべきものを知る「グレンフィディック セレクトカスク」


■ダフタンに生まれたグレンフィディック

グレンフィディック蒸溜所は、スコットランドのウィスキーの町、ダフタンにあります。
ダフタンはダフタウンとも発音されますが、地元の発音ではダフタンが正解でしょう。
スコッチウィスキーの代表的産地、スペイサイドの中でもとりわけ蒸溜所が集中している地域です。
地元ではダフタンといえばウィスキーのことを指すほど同一視されています。
決して広くない土地に蒸溜所が9ヶ所、その中で現在も蒸溜所を続けているところが6ヶ所もあります。
そのうちの3ヶ所がウィリアム・グラント社、グレンフィディックを創業したウィリアム・グラントの名を冠した会社の所属です。
ウィリアム・グラントがグレンフィディック蒸溜所を設立したのは1886年のことでした。
は地元のダフタン出身で、長らくほかの蒸溜所を勤め上げた末、独立して自身の蒸溜所を持つに至りました。
そのときすでに47歳、今でこそ若くまだこれからといえますが、当時はもう定年していてもおかしくはない年齢でした。
彼はこの地で最高の一杯を造るのだと心に決め、家族総出で蒸溜所を設立したのです。

■ウィスキーとの出会いから独立へ

ウィスキーへの熱い志を胸に蒸溜所を設立したウィリアム・グラントですが、もとは仕立て屋の息子で、ウィスキーに関しては全く知識がありませんでした。
小学校時代から利発で積極性がありましたが、30歳近くまで働いていたのは地元ダフタンの石灰鉱山会社です。
1866年にダフタン唯一のモートラッハ蒸溜所で人員を募集しているのを聞きつけ、ウィスキーのことは何も知らずに応募し採用されます。
そこで彼はウィスキー造りへの関心を高め、いつか自分で蒸溜所を持つために技術と貯蓄を重ねました。
47歳のとき彼は独立を決心し、たまたま売りに出されていた蒸溜設備を購入してグレンフィディック蒸溜所を立ち上げたのです。
当然資金に余裕などなく、建設は石工1人を雇っただけで、後は全て家族で当たったといわれています。
息子7人、娘2人、子だくさんで大変な生活でしたが、それもまた大きな戦力となりました。
慣れない大工仕事に奮闘する家族に毎日食事を運んだのは、まだ10歳の末娘だったそうです。
そうして翌1867年のクリスマス、蒸溜所最初の一滴が滴り落ちました。
それは苦しい毎日の全てが報われる瞬間だったに違いありません。

■シングルモルトウィスキーのパイオニアへ

今でこそシングルモルトウィスキーはウィスキーの中のウィスキーという認識ですが、1963年、グレンフィディックが世に出すまでは市場にはないものでした。
当時はブレンデッドが主流であり、蒸溜所の個性が前面に出るシングルモルトは単体では売れるはずもないと信じられていました。
創業者のウィリアム・グラントがこの世を去ったのは1923年ですが、40年後にグレンフィディックは一つの答えを出しました。
個性が強く、これこそがグレンフィディックだと主張するシングルモルトウィスキーの誕生です。
1980年代になると、多くの蒸溜所がシングルモルトを一般リリースするようになっていきます。
それでも世に先駆け個性を打ち出したのは、グレンフィディックにほかなりません。
創業者の信念と家族の絆、130年以上君臨し続ける雄鹿のアイコン、手になじむ三角ボトル、これは今も全く変わりません。
グレンフィディックは、自身が守るべきものとパイオニアとして革新していくべきもの、その両方を知っているのです。

■「グレンフィディック セレクトカスク」

グレンフィディック セレクトカスクは、世界初、ブレンデッド用ではないシングルモルトとしてリリースされた逸品です。
バーボン樽、ヨーロピアンオーク樽、赤ワイン樽で独自熟成され、より滑らかで複雑なフレーバーが魅力となっています。
蒸溜所の個性やクセが前面に出るシングルモルトは、作り手の腕や信念が明らかにされるウィスキーです。
グレンフィディックが伝えたいメッセージを、ダイレクトに受け取ることのできるボトルといえるでしょう。