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再び蘇ったゴールデンホース

■日本酒だけでなくウイスキーも絶賛された酒造りの蔵元
1625年、江戸時代に肥土（あくと）酒造本家として酒造りを始めたのが、現在はキング醸造株式会社のグループ会社となっている、東亜酒造株式会社です。
肥土酒造本家から東亜酒造株式会社へと社名を変更したのは1959年のことで、それに先立つこと7年前の1946年に、ウイスキー販売免許を取得しています。
これによって、老舗の酒造りの蔵元として数多くの賞を受ける日本酒を造りながら、ウイスキー造りも手掛けるようになります。
ウイスキー造りにおいて大きな役割を果たしたのが、羽生蒸留所の存在です。
ウイスキーを手掛けるようになった際の肥土家当主が造った蒸留所で、モルトウイスキー造りに適したポットスチルと呼ばれる単式蒸留機を備えていました。
1946年に免許を取得してからわずか2年後の1948年には、自社蒸留所のモルト原酒から造り出したモルトウイスキーを販売しています。
これが地ウイスキーの先駆けとなったゴールデンホースで、その品質のよは長い歴史を持つ日本酒で高い評価を受けているだけあって、ウイスキーも大絶賛、地元では知らぬ人はいないとまで言われるほどの高品質のモルトウイスキーとなったのです。

■経営の危機に見舞われた2004年
2000年以降、徐々に経営悪化に見舞われていた東亜酒造は、2004年についに経営破綻に陥り、会社を売却することになります。
買取先はキング醸造株式会社で、日本酒の販売は東亜酒造株式会社の名を残して続けるものの、ウイスキーは造らないという決定が下ったため、羽生蒸留所は閉鎖、原酒を処分する必要が生じました。
貴重な原酒を守ったのは創業者の血を引く肥土伊知郎（あくといちろう）で、近年大人気のイチローズ・モルトを販売する株式会社ベンチャーウイスキーの創業者です。
肥土伊知郎にとっては祖父が造った大切な原酒だったため、引受先を探し回って原酒を守り抜きました。
そしてこの原酒が今、新たなジャパニーズウイスキーの歴史を刻んでいます。

■東亜酒造でもウイスキー事業を再開
2000年にはウイスキー造りを休止し、その後は売却してウイスキー造りとは縁がなくなった東亜酒造ですが、当時の職人が在籍していたことや、会社としての業績も安定してきたことから、2016年にウイスキー造りを再開します。
ただ、自社の蒸留所はないことから、原酒はすべてスコットランドから取り寄せたものを使っています。
東亜酒造と言えばゴールデンホースとすぐに名前が出るほどの人気ウイスキーの復活はファンには朗報でしたが、羽生蒸留所で造ったオリジナルのモルト原酒がないことから、出来栄えは当時の味と同じというわけにはいきません。
しかしながら、東亜酒造のゴールデンホースとして発売を再開したのには、いつかは自社モルトを造りたいという想いが見え隠れしています。
老舗の酒蔵として長い歴史を持ち、地ウイスキーの先駆けとして高品質のモルトウイスキーを造ってきたものの、倒産という辛酸をなめただけに、自社モルト造りにかける想いは強いものがあると言えるでしょう。

■新しく生まれ変わったゴールデンホースを味わうのもまた一興
東亜酒造のウイスキーの代名詞とも言えるゴールデンホースのうち、2種類の銘柄を復活させました。
その1つがゴールデンホース 武蔵 ピュアモルトウイスキーです。
貯蔵年数の異なる複数のスコットランド産のモルト原酒だけをブレンドしたピュアモルトウイスキーで、モルトウイスキーだけが持つ美味しさが堪能できる高品質のウイスキーとなっています。
複数のモルトをブレンドしていることから、異なるモルト原酒が持つ味わいが複雑に混ざり合いながらも、華やかで奥深い香りと味わいが楽しめるウイスキーに仕上がりました。
モルトウイスキーのおすすめの飲み方であるストレートでは、まずアルコールの刺激が来ますが、その後で梨や青リンゴ、バニラといった香りが続いて出てくるのが特徴です。
アルコールの辛さの中に、酸味と甘い味わいが感じられるところが、複雑な中に生まれるこのウイスキーならではのよさと言えます。