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東亜酒造の「名馬」ゴールデンホース樽出しブレンド復活の歴史

■地ウイスキーブームをもたらした「名馬」ゴールデンホース
東亜酒造と言えば、埼玉県の清酒生産量の10%をも担う大手酒造メーカーです。
埼玉県は全国5位の清酒生産量を誇るため、その一割を担うということがどれほど凄いことかは想像に難くありません。
何よりこの酒造の名前を知らしめたのがゴールデンホースです。
1980年代、日本には地ウイスキーブームが起こりますが、そこで全国的な人気を博したのが東亜酒造のゴールデンホースでした。
ところがこの名馬は人気を集めながらも一時姿を消し、2016年に劇的な復活を果たすのです。
そこにどのような歴史があるのか、ウイスキーファンならぜひ知っておきたい秘話があります。

■地ウイスキーの東の雄を生んだ酒造
東亜酒造は地ウイスキー市場が1980年代に活況を呈していた時、地ウイスキーの東の雄とたたえられたゴールデンホースという銘柄を生み出した酒造です。
埼玉には非常に多くの酒造がありますが、東亜酒造の創業は寛永2年、1625年にまで遡ることができます。
当時は肥土酒造という名前でしたが、越後杜氏の丁寧な手による酒造りが評判となり、主要銘柄である清酒晴菊（はれぎく）は明治時代に生み出されました。
実は江戸時代埼玉県周辺は有名な米処であり、約700もの造り酒屋があったとされます。
この地での酒造りは16～17世紀にかけて非常に盛んになり、そんな中で東亜酒造の原点である肥土酒造が設立されました。
明治17年(1884年）には近代史上最大の民衆蜂起である秩父事件が起こりますが、当時負債を抱えた多くの農民たちに食料を提供し、生活を支援したのが肥土酒造16代目当主晴三郎だったと言われています。
昭和16年には穀倉地帯の羽生市に本社を移していますが、土地に根付いた真摯な酒造りを行って来た老舗と言えるでしょう。
ウイスキー事業への参入は昭和21年（1946年）のことで、当初は自社での蒸留ではなく輸入したモルト原酒をブレンドした商品からスタートしています。

■ウイスキー事業の休止と再生
輸入したモルト原酒のブレンドから自社の原酒造りに取り組み始めたのは、昭和55年（1980年）のことです。
ウイスキー蒸留のために羽生蒸留所を建設し、創業地を冠したゴールデンホース秩父8年などゴールデンホースブランドがここに誕生します。
ゴールデンホースはこの後訪れた地ウイスキーブームで一躍人気銘柄となりますが、その後ブームの終焉とともに日本のウイスキー市場自体が低迷してしまいます。
それにともない羽生蒸留所は2000年に操業が停止され、2004年にはついにウイスキー製造自体が休止となりました。
にもかかわらず、東亜酒造の名は往年のウイスキーファンだけでなく、世界中の愛好家の間で非常によく知られる存在です。
そのことにはジャパニーズウイスキーである「イチローズモルト」が深く関係しています。
イチローズモルトはベンチャーウイスキーですが、創設した肥土伊知郎氏は東亜酒造の創業家の一人です。
社員であった肥土氏は羽生蒸留所の閉鎖時に貯蔵されていた原酒を譲り受け独立、それをブレンドして初期のイチローズモルトを世界に発信していたのです。
ウイスキー業界の低迷により一時姿を消してしまったゴールデンホースも、近年の国産ウイスキー人気の高まりを好機と捉え、2016年に復活を果たしました。
クラフトウイスキー造りに挑みたいという夢を持って市場に再参入した東亜酒造は、新生名馬を武器に今再び世界をうならせる銘酒を生み出しています。

■気品ある熟成のモルトが香る東亜酒造 ゴールデンホース 樽出しブレンド
東亜酒造のゴールデンホース 樽出しブレンドは、本場のスコットランド産の熟成モルトをふんだんに使用したブレンデッドウイスキーです。
飲み口は力強くありながら、スムーズで深く気品ある余韻を残す風格が感じられる仕上がりです。
樽香を楽しみながら、ビターオレンジやマーマレードのような芳香が漂い、刺激感とフルーティー感を楽しめる逸品です。
この名馬が駆け抜けて来た歴史と、これから築き上げていくであろう栄光に想いをはせながら、味わってみてはいかがでしょうか。