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ビール樽でフィニッシュされた「グランツ エールカスク フィニッシュ」


■「グランツ エールカスク フィニッシュ」とは

「グランツ エールカスク フィニッシュ」はオーク樽で熟成させた原酒をエールカスク、いわゆるビールの樽でフィニッシュさせたものです。
エール特有の麦芽のモルティな香りが香った後、バニラ系のしっかりとした甘い香りが楽しめ、後からクリーミーなラムレーズンの香りも楽しむことができます。
口に含むとエール樽由来のモルティさに加えてバニラの甘味が訪れ、さらにエール樽特有の苦味が走ります。
苦味といっても嫌味のある苦味ではなく、ビールらしさと、甘味を高めてくれるような繊細でナチュラルな苦味です。
メープルシロップや蜂蜜をはじめ、熟成させた樽のオーク材の香りもしっかりと感じられます。
エジンバラの伝統的なエールの貯蔵樽を用いたことで、ウィスキーが柔らかくなり、エール樽を通じたクリーミーな味わいが楽しめます。
グランツではウッドフィニッシュでもさまざまな挑戦をしていますが、エールカスク・フィニッシュは唯一ビールの樽で熟成された珍しい一本です。

■グランツの誕生の歴史

グランツの製造元はスコットランドにあるウィリアム・グラント＆サンズ社ですが、日本での販売はビームサントリー社によって行われています。
ウィリアム・グラント＆サンズ社は1887年創業で、スコッチウィスキーの一大産地であるハイランドのスペイサイド地方に位置するダフタウンの町で産声を上げました。
製造されたモルト原酒は、当時主流だったブレンデッドウィスキー用の原酒として、ブレンドを手掛ける会社に卸していました。
事業が軌道に乗ったウィリアム・グラント＆サンズ社では、グレンフィディック蒸溜所を創業して5年目となる1892年にグレンフィディック蒸溜所に隣接していた敷地を買い取り、第2蒸溜所としてバルヴェニー蒸溜所を設立し、短期間で大きな成長を遂げています。
順風満帆と思われた矢先、1898年に最大の取引相手であったブレンド会社のパティソンズ社が倒産するという大きな壁が立ちはだかります。
当時パティソンズ社に原酒を提供していた、ハイランドの小規模な蒸溜所は次々と連鎖倒産に陥ったのです。
グレンフィディック蒸溜所にとっても、一番のお得意先であったパティソンズ社の倒産による被害額は相当なものでした。
この苦境をどうにか乗り切ろうとした、創業者のウィリアム・グラントはあるアイデアを思いついたのです。
そのアイデアとは、ウィリアム・グラント自らがブレンダーとなり、オリジナルのブレンデッドウィスキーを造ることでした。
こうして誕生したのがグランツの原型となったグランツ・スタンド・ファストであり、世界で親しまれるブレンデッドスコッチウィスキーのグランツがスタートしたのです。

■世界で人気を集めるシングルモルトとブレンデッド

ウィリアム・グラント＆サンズ社はブレンデッドウィスキーしか流通していなかった時代に、世界で初めてシングルモルトをリリースしたことで名を馳せたグレンフィディックのブランドも手掛けており、世界一のシングルモルト販売量を誇っています。
一方、グランツもブレンテッドスコッチウイスキーの売り上げでは、トップ10入りの常連メンバーです。
毎年トップ3に輝いていたのはジョニーウォーカー、バランタイン、シーバスリーガルといった王道のメーカーでしたが、2016年にはシーバスリーガルを抜いて3位にランクインを果たしました。
この年、シーバスリーガルは430万ケース、グランツが450万ケースと僅差ではあるものの、見事、販売量を抜いたのです。
グランツは世界で一番人気のシングルモルトであるグレンフィディックをはじめ、バルヴェニー蒸溜所などウィリアム・グラント＆サンズ社が運営する4つのシングルモルト蒸溜所と1つのグレーン蒸溜所という、自社のみの原酒でブレンドができます。
そのため、上質な味わいにも関わらず、低価格で購入できるので、世界で親しまれるブランドへと成長を遂げているのです。