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■ヘネシーの創始者は偉大
どんな企業にも当てはまることですが、創始者から連綿と続く企業に波風の立たない時代はありませんし、紆余曲折がまったくなかったということもあり得ません。
ただ、その一方で、創始者によって始められた事業が、最初からある程度波に乗って成長していくことも、偉大な企業になるには欠かせない要素と言えます。

フランスのコニャック地方で、1765年にヘネシーを創立したリチャード・ヘネシーは、アイルランド人でありながらフランスを愛し、コニャック地方に住みながら事業を始めます。
これも、彼の持って生まれた宿命だったのでしょう。
リシャールというフランス読みの名前に変え、本格的にコニャック作りに取り組むために、6つのブドウ畑を所有します。

さらに、コニャックを名乗れる最高級ブランデーにするために満たすべき条件を、リシャール・ヘネシーは持ち前のコニャック作りに対する情熱で次々とクリアしていきます。
6つのブドウ畑には、それぞれ出来の異なるランクの違うブドウ栽培を行い、軌道に乗せたら、コニャックならではの蒸留方法を確立します。

このおかげで、非常にクリアな不純物を徹底的に取り除いた原酒を作り出すことに成功するのです。
これこそが、「比類なきコニャック」と呼ばれる理由かもしれません。

さらに、リムーザンもしくはトロンセ産のオーク樽に2年以上熟成した原酒を使うことが条件ですが、リシャールはこれもクリアし、今ではヘネシーには35万樽以上もの原酒があると言いますから驚きです。

もちろん、35万樽以上は250年以上の歴史が生み出したものですが、リシャールの情熱と行動力によって「比類なきコニャック」は誕生したのです。

■商売人としての手腕
リシャールは、「コニャックはこれから世界中で売れる」という先見の明を持っていました。
上質のコニャックを飲んだ経験を持つ彼にとって、このおいしさが世界に受け入れられないはずはないという自信があったのでしょう。

18世紀末からアメリカ合衆国を皮切りに、リシャールは本格的にヘネシーのコニャックを売り込み始め、19世紀にはオーストラリアと東南アジアに販路を広げます。
東南アジアの中にはもちろん日本も含まれ、その結果、ヘネシーは南アメリカを筆頭にオーストラリア、中国、そして日本を主たる市場として確立させたのです。

今では世界130国以上でヘネシーのコニャックが手に入るほどの、大きな商業的成功を収めたのが、ほかならぬ創業者のリシャールでした。
もちろん、1800年にリシャールは他界していますので、その後は彼の家族が連綿とコニャック作りとビジネス展開を続けてきたことになりますが、創始者による確かな土台作りがなければ、おそらくどこかで頓挫し、現在のヘネシーはなかったのではないでしょうか。
■ヘネシーの最高級ブランドとはいったいどれなのか
ヘネシーは、創始者もさることながら、創始者につながる子孫も有能だったといえます。
次々とマニアやコレクターを生み出す人気ブランドになっただけに、気になるのは、「ヘネシー社が現在売り出しているコニャックの最高級品はどれなのだろうか」ということです。

好みもありますが、高級なヘネシーの中でもとりわけ高額で知られるのが「ヘネシーパラディー」です。

美しいラウンド型のボトルに入った姿は、優美という言葉がしっくりくる、いかにも上質なコニャックという雰囲気をまとっています。
ヘネシーパラディーの最大の特徴は、最も貴重な原酒だけを選んでブレンディングされていることです。
パラディーとは秘蔵古酒熟成庫のことで、熟成年数25年から130年の間、じっくり熟成された原酒だけをブレンディングしています。

さらに、オードヴィーと呼ばれるこの原酒を100種類以上もブレンディングして醸し出す味わいと芳醇な香りは、エレガントで軽やかな中に重厚さも併せ持ち、さまざまな味わいが楽しめることから、間違いなくヘネシーの誇る最高級の逸品です。

1979年に作られたヘネシーパラディーのパラディーとは、「パラダイス」を意味しているということで、まさに一口飲んだらパラダイスな気分に浸れるヘネシーなのでしょう。
リシャールが亡くなる前に完成していることから、彼も味わったと信じたい一本です。