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■フランスのお酒はいろいろ決まりがあることでも有名
フランスでは、地方ごとで作られるお酒に特別な呼び方をすることがしばしばあります。
ワインでいえば、ボルドー地方やブルゴーニュ地方がよく知られていますし、シャンパンはシャンパーニュ地方で作られます。
同じように、厳正なる条件を満たした高級ブランデーのことをコニャックというのは、今ではよく知られています。

NHKの朝の連続テレビ小説「マッサン」でウイスキー人気に火が付いてからというもの、次はブランデーに人気が集まるのではないかというのがもっぱらの噂ですが、コニャック地方で作られた高級ブランデーが、コニャックです。
同じ高級ブランデーであるアルマニャックは、アルマニャック地方で作られることからアルマニャックと呼ばれます。

もう一つ、フランスの三大高級ブランデー産地として知られるのがノルマンディー地方ですが、唯一ブドウではなくりんごを使って作られる高級ブランデーで、カルヴァドスとして知られています。
フランスの高級ブランデーは、全部コニャックだと思わないようにしないといけません。

■コニャックで有名なブランド
コニャック地方において定めた、製造における基準を満たした高級ブランデーのことをコニャックと呼びますが、コニャックを作る有名なメゾン、いわゆる醸造業者は複数あります。

よく知られているところでは、ヘネシーやレミーマルタンで、どちらも一度は飲んでみたいものです。
それぞれ興味深い歴史を持っていますが、レミーマルタンの方がヘネシーより先にコニャック作りに着手しています。

1724年に創業したレミー・マルタンに対し、ヘネシーは、1765年にアイルランドからフランスのコニャック地方へやってきたリチャード・ヘネシーによって創業されています。
リチャードがコニャック地方にやってきたのは1750年で、そこで就いた仕事は国王を守る兵士であり、将校に任ぜられていました。

けれど、コニャックの製造は今後、必ず世界中で人気を博すだろうと考えたリチャード・ヘネシーは、名前をフランス読みのリシャールと変え、1765年、リシャール・ヘネシーを創始者とするヘネシー社を立ち上げます。

このとき、1750年から就いていた将校を退役したリシャールですが、退役後はコニャック作りに取り組もうと早くから決めていたと言いますから、自らの人生の設計もうまかったと言えそうです。

■国王や女王に愛されたヘネシー
リシャール・ヘネシーは非常に野心家で、地位や名誉のある人にヘネシーの良さを知ってもらうという戦術がうまい人でもありました。
そのため、ヘネシーはしばしばフランス王室で話題になりましたが、その他の国々で王室がある国でも、話題に上ることが多かったと言えます。
1817年には当時のイギリス国王であった「ジョージ4世」に献上し、大いに気に入られます。

さらに1818年には、ロシア皇后の「マリア・フォードロヴナ」に、やはりヘネシーのコニャックを献上した記述が残っています。
ロシア皇后はいたく気に入ったと見えて、それ以降、ロシア王室へは定期的にヘネシーのコニャックが届けられています。

いったいどんなヘネシーを贈ったのかまではわかりませんが、リシャールのことですから、おそらくもっとも上質のコニャックを贈ったに違いありません。

■そんな最高級のコニャックがこちら
ヘネシーには、最高級という言葉を付けたいコニャックが実にたくさんあるのが困りものですが、「ヘネシーパラディーアンペリアル」は、実はロシアと関係が深いコニャックです。
それというのも19世紀にロシア帝国からの要望によって、ヘネシーが特別にブレンドして作ったコニャックだからです。

ヘネシーが持つ熟成させたオー・ド・ヴィーと呼ばれる原酒をブレンドする技術は卓越したものとして知られていますが、「ヘネシーパラディーアンペリアル」は、国の最高位の地位を占める王やたくさんの貴族などをはじめとする、最も大切な客人に振る舞うために作られた極上のコニャックです。
つまり、これを出せば間違いない、ヘネシーの逸品だったことは明らかです。