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熟成の神秘に取りつかれたジャパニーズウイスキーを追い求めた男

■世界5大産地の一つに入る高品質さ

ウイスキーといえば、スコッチやバーボンなどといった名前がよく知られていますが、これらはどこで造られたウイスキーかということを示しています。
スコッチはスコットランドですし、バーボンはアメリカです。
その他、アイルランドはアイリッシュウイスキーと呼ばれ、カナダはカナディアンウイスキーと呼ばれています。
これら4つの国は世界的に見て非常に上質のウイスキーの産地として知られていますが、世界のウイスキー産地は実は5つあります。
上記4つに加わるもう一つが、日本です。
日本の酒といえば日本酒ですし、蒸留酒には焼酎があります。
しかしながら、世界に数多くある国の中から、とりわけ上質のウイスキーを造る国として名前が挙がるところに、日本におけるウイスキー造りの技術の高さがうかがえるでしょう。
世界5大産地の一つに入るだけの高品質なジャパニーズウイスキーの歴史を紐解くと、2人の人物に行きあたります。
スコッチウイスキーの本場・スコットランドで修業してきたニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝と、ニッカウヰスキーに先駆けて国内で大ヒットウイスキーを造り出した、サントリー創業者の鳥井信治郎です。

■日本人の口に合うワインを造り出した功績も

竹鶴政孝と妻のリタをモデルにしたドラマが放送されたため、ウイスキーに注目が集まったことから、ここ数年ウイスキーは品不足といわれています。
さらに、ハイボールという新しいウイスキーの飲み方も大ヒットしましたが、その際のウイスキーの一番人気が、国内で初めて売れに売れるウイスキーとなったサントリー12年、現在のサントリー角です。
1937年の発売から現在に至る82年もの間、多くの人に愛され、ロングセラーとなってきた角を生み出した鳥井信治郎ですが、実は最初に手掛けた洋酒はぶどう酒でした。
スペインのぶどう酒会社を買収したサントリーの前身・寿屋洋酒店は、スペインのぶどう酒があまりにも売れないのは日本人の口に合わないからだということに気づき、日本人の口に合うワイン造りに取り掛かります。
その結果生まれたのが赤玉ポートワインで、甘口で飲みやすかったことから、爆発的にヒットしました。
1921年には株式会社寿屋を設立、大正時代後期には国内ワインの60％を赤玉ポートワインが占めていたのですから、これ一筋に事業に専念することで、大きな利益を上げられたのです。
けれど、鳥井信治郎は違いました。

■猛反対を押し切って着手したウイスキー造り

赤玉ポートワインの成功で、安定した会社経営ができていた株式会社寿屋ですが、創業者の鳥井信治郎は、次はウイスキーを造りたいと言い出します。
これには会社役員がこぞって意義を唱え、翻意を促しましたが、鳥井は頑として聞き入れません。
赤玉ポートワインの成功から2年後、山崎蒸溜所を建設して乗り出したウイスキー造りでしたが、成功までには苦難の道のりが待っていました。
国産ウイスキー初となるサントリー白札、サントリー赤札のどちらもまったく売れないという散々な結果となり、拡大していた事業を手放すことになってしまったのです。
それでも鳥井信治郎はウイスキー造りを諦めず、ついに誕生させたのがサントリーウイスキー12年でした。
四角いボトルが人気を集めたこともあって、角瓶として広まっていったのです。
ウイスキー事業を軌道に乗せたサントリーの鳥井信治郎と、その後、同じく国産ウイスキー製造に成功したニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝とともに、日本を世界で5本の指に入る上質なジャパニーズウイスキーの産地にしたことは、歴史が証明しています。

■サントリーが誇る特別なウイスキー

1989年に生まれた「響」は本格国産ブレンデッドウイスキーで、世界中のウイスキーファンに好まれており、ジャパニーズウイスキーの代表ともいえるブランドです。
響は希少価値が高いのも特徴で、免税店でのみ限定販売した意匠ボトルシリーズの花鳥風月は、開けるのがもったいないボトルとしてコレクターも多く存在します。
とはいえ、鳥井信治郎がこだわった熟成された美味しさが存分に味わえるウイスキーだけあって、飾っておくだけなのもまたもったいないといえる逸品です。