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ウイスキー業界の風雲児は真面目で誠実な人

■世界に誇る新たなウイスキーメーカーの誕生
日本はウイスキーにおいて、世界5大産地の1つに数えられています。
アイルランドにスコットランド、アメリカにカナダ、そして最後が日本です。
日本はもともと発酵してすぐに飲める醸造酒の清酒を作っていた国ですので、ウイスキーの5大産地として最後に名前が挙がるのは致し方ありませんが、その一方で蒸留酒を作る技術においても優れているということが、日本人の粘り強さや忍耐力を如実に物語っていると言えます。
ジャパニーズウイスキーの父と呼ばれるニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝は、まさにそんな人でした。
とにかく本物のウイスキーを日本の人に飲んでもらいたい、そしてその美味しさを知ってもらいたいというその一心で、決して妥協を許さないウイスキー造りに取り組んだ竹鶴政孝の功績は、後世の人々に大きな感動を与えています。
2004年、そんな世界に誇るジャパニーズウイスキーに新たな風を巻き起こしたのが、業界の風雲児である株式会社ベンチャーウイスキーの創業者・肥土伊知郎です。
肥土伊知郎は、多くの点でジャパニーズウイスキーの父である竹鶴政孝に似ています。

■奇妙なまでによく似た道を歩んだ二人
江戸時代から390年以上も続く老舗の酒蔵・東亜酒造に生まれた肥土伊知郎は、当然のように大学で醸造学を学びます。
これは、同じく竹鶴酒造に生まれた政孝が、現在の大阪大学工学部醸造科で酒造りを学んだことと酷似しているのです。
さらに卒業後、政孝は実家の竹鶴酒造ではなく洋酒業界の雄と呼ばれた摂津酒造に入社し、洋酒への道を歩み始めます。
肥土伊知郎もまた、実家の東亜酒造ではなくサントリーに入社し、技術者として山崎蒸留所で働くことを希望します。
ともに実家が酒造りをしているにも関わらず、他の酒造会社に就職し、そこで技術を磨いていこうとした足跡が、これほどまでに重なっていることに驚きを禁じ得ません。
ここから先も二人の道は奇妙なほど似ていて、スコットランドでウイスキー造りを学んで帰ってきたものの、政孝を待っていたのは資金難でウイスキー造りができなくなっていた摂津酒造でした。
サントリーの山崎蒸留所で技術者になることを希望していた伊知郎は、技術者になるための基準をクリアしていないとして、サントリーで技術者になるという道を断たれます。
政孝も伊知郎も、技術者として働ける次なる場所が必要という点において、まさに数奇とも言える似た境遇を経験しているのです。

■行きついた先は自らの蒸留所
政孝は苦難の末、スコットランドに似た場所として余市を見つけ出し、ついに自らの蒸留所を造り上げます。
そして伊知郎もまた、スコットランドに似た気候であるとして、生まれ故郷の秩父に蒸留所を作りました。
政孝が余市蒸留所に造ったのがポットスチルと呼ばれる単式蒸留機だったことは、竹鶴ノートを見れば意外でも何でもありませんが、長い時を経て生まれたベンチャー企業の創業者である伊知郎もまた、ポットスチルを選んでいるのです。
しかも、本場スコットランドから取り寄せたもので、肥土伊知郎の祖父がモルトウイスキーにこだわったのは、竹鶴政孝の存在があったように思われてなりません。
モルトウイスキーに注いだ祖父の思いは、孫へと引き継がれ、株式会社ベンチャーウイスキーが送り出すウイスキーは、今や世界中で大絶賛されています。
歴史の皮肉は、伊知郎がニッカウヰスキーではなく、サントリーに入社したことかもしれません。
ニッカウヰスキーに入社していたとしたら、株式会社ベンチャーウイスキーが生まれることはなかったかもしれないと思うと、サントリーに入社したことにも理由があったと言えます。

■カードモチーフで大人気のモルトウイスキー
株式会社ベンチャーウイスキーが送り出すイチローズ・モルトは、日本人の舌に合うモルトウイスキーでありながら、世界中のウイスキーファンをうならせる仕上がりになっているのが最大の特徴です。
トランプのカードをモチーフにしたイチローズモルト カード エイト・オブ・クラブスは、1988年に蒸留されていることから、祖父が作った羽生蒸留所で作られた原酒を使って2011年にボトリングし、限定561本で販売をした希少な品です。
カードシリーズのコレクターが集めている上に、本数が限定されたカードシリーズになったとあって、オークションなどでしばしばプレミアム価格で登場するウイスキーとなっています。
イチローズ・モルト特有のべっこう飴のような甘さと、モルトならではのスモーキーな味わいは、繊細で複雑ながらも飲みやすいフレーバーです。
とはいえ、手に入れたとしても開封にはかなりの勇気が必要になる、希少価値の高い逸品なのは間違いないでしょう。