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絵柄が特徴的なイチローズモルト カード テン・オブ・スペーズの歴史を紹介

■日本産のウイスキー

日本産のウイスキー、いわゆるジャパニーズ・ウイスキーの生産は明治時代にまで遡ります。
もともと製造していた地域ではないためその道も平坦ではなく、ジャパニーズ・ウイスキーの確立には多くの人々の努力が費やされました。
初めの頃は世界の好事家からの評価は芳しくなく、「これはウイスキーではない」とまでいわれることさえ少なくなかったそうです。
しかし研究を重ねて徐々に高い評価を受けるようになり、種類によっては本場であるスコッチ産のものよりも賞賛されるウイスキーさえあります。
また近年では世界各国での受賞機会も増え、知名度はますます上昇しています。

■目でも楽しめるウイスキー

ウイスキーを製造販売しているメーカーとして多くの方々がまず思い浮かべるのはニッカやサントリーなどでしょう。
しかし国内には大小さまざまな蒸溜所があり、中には規模は小さいながらも世界中から注目を集めているメーカーも存在します。
その筆頭であるのが埼玉県秩父市に拠点を置き、イチローズモルトを製造しているベンチャーウイスキーです。
ベンチャーウイスキーは2004年に稼働したまだ若いメーカーであり、従業員の平均連嶺も2020年時点で30歳です。
そのようなベンチャーウイスキーが世界に名を轟かせるきっかけとなったのがカードシリーズでした。
このカードシリーズは名前の通りラベルにトランプが描かれています。
たとえばイチローズモルト カード テン・オブ・スペーズは破かれたスペードの10の下に英字新聞が描かれており、非常に凝っています。
また、カードが手に持たれているファイブ・オブ・クラブス、山札の中から少しだけ顔を覗かせているナイン・オブ・ダイヤモンズなどがあり、見ているだけでも楽しめます。
カードシリーズは現在までにマークごとに13種、それにジョーカー2種を加えた計54本が出荷されています。
カードシリーズはその人気の高さにかかわらず出荷本数がどれも少なく、数百本しか世に出回っていません。
そのため54種すべてが揃っているのは4セットしか存在しないといわれています。
しかし2019年、その一つが香港のオークションに出品され、世界中のウイスキーファンを驚かせました。
激しい競争の末カードシリーズのセットは日本産ウイスキーとして過去最高額である約9750円で落札されました。
もともと人気があるカードシリーズですが、2015年に同様のオークションがかけられたときには半分の落札額であったことからも、いかにイチローズモルトが現在世界中から注目を集めているかがわかるでしょう。

■出荷本数が少ないのはカスクストレングスだから

世界中から買い手が集まり常に品薄であるイチローズモルトが、その中でも特に人気が高いカードシリーズの出荷本数を数百本に留めていたのは、54種すべてがカスクストレングスであったからです。
長い年月をかけてゆっくりと熟成させて造るウイスキーはその過程で味や品質などが大きく変化します。
そのため同じ蒸溜所で同じ時期に造られたウイスキーであったとしても樽ごとに性質が異なります。
通常の場合はいくつかの樽の原酒を合わせ、また飲みやすい度数になるよう加水してから出荷されます。
一方カスクストレングスはそのようなことを一切行いません。
冷却濾過や着色といった加工も施さず、樽の中にある原酒をそのまま瓶に詰めます。
そのため同じ味わいのウイスキーは原酒の量しか出荷できません。

■カスクストレングスのウイスキーを楽しんでみてください

香味の調整を行わないカスクストレングスは当然ながら種類ごとに特徴が異なります。
たとえば冒頭で紹介したイチローズモルトカード テン・オブ・スペーズはピーティかつスモーキー、そして樽材の風味がしっかりと根付いて複雑な味わいとなっています。
また香りは深入りのコーヒーを連想させ、それにあわせて華やかな花が垂らす蜜のような優しい芳香も漂う逸品です。
当然ながらこれはイチローズモルトカード テン・オブ・スペーズだけのものであり、ほかのカードシリーズではまた違った味わいを楽しめます。
もし複数のカードシリーズを飲む機会に恵まれたのなら、ぜひ各々を比べてみてください。