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2010年代はこれまでにない日本酒が登場した時代

■1975年が日本酒販売のピーク

どんな品物にも注目が集まり、生産量や販売量において最高を記録する時期があります。
その後、売れ行きが落ちていくことによって、最も人気があったピークはいつかということがわかるのですが、日本酒においてのピークは1975年です。
現在、世界中で和食が好まれると同時に、日本酒もSAKEで通じるほど人気が高まっていますし、国内では地酒ブームが巻き起こっています。
ただ、国内の販売量はピーク時の1/3にまで減っているのは、ドラマの影響によってウイスキー人気が高まりからハイボールブームが巻き起こるなど、かつてのように日本酒以外の選択肢が増えたことも大きな要因です。
その一方で、地方の美味しい酒を探し出したいという人は増加傾向にあり、大手酒造メーカーが送り出す酒よりも、地方の酒造会社に注目が集まっているのが、現在の地酒ブームといえるでしょう。

■洞爺湖サミットの夕食会に選ばれた老舗の酒造会社

2008年に世界8か国の首脳とEUの委員長が、北海道洞爺湖を舞台に集まった北海道洞爺湖サミットはまだ記憶に新しいところですが、このときの夕食会において乾杯の際に使われたお酒は日本酒でした。
さぞかし大手酒造メーカーの高級酒が用意されたことだろうと思いきや、選ばれたのは静岡県焼津市にある磯自慢酒造株式会社というところだったのです。
多くの人にとって聞きなれない名前の酒造会社であったことから、並み居る強豪銘酒を押しのけて採用された磯自慢に注目が集まったのも無理はありません。
磯自慢酒造株式会社は、洞爺湖サミットによって一躍全国にその名を知られることとなり、今や飲んでみたい地酒の常連となりました。
天保元年創業の磯自慢酒造株式会社は、2020年に創業190年を迎える老舗ですが、一時期品質の劣る酒を造っていました。
理由は高度経済成長によって生産が追い付かなくなった大手酒造メーカーが、代わりに地方の酒造会社に造ってもらい、桶ごと買い取ったからです。
品質が悪くても造った分だけ買い取ってくれる大手の桶買いは、地方の酒造会社を結果的に追い詰めることになるのですが、その当時はできるだけ安い酒を造って儲けを増やそうと考えたのを責めることはできないでしょう。
地酒の販売相手は限られており、多くの利益を上げる機会はそうそうなかったのですから、無理もありません。

■いち早い危機感が救った磯自慢

諸行無常といわれますが、売れに売れた日本酒にも終わりがやってきます。
大手による桶買いがなくなると、いったん落ちた品質の酒が地元で相手にされるはずはなく、地方の酒造会社はどんどんその数を減らしていきました。
長い歴史を持つ磯自慢酒造株式会社も、もう少し長く桶買いに胡坐をかいていたら、今頃はもう存在していなかったかもしれません。
いち早く日本酒人気の陰りに気づいて危機感を持った現社長の存在が、長年続いてきた老舗地酒の歴史を守ったことは明らかです。
2010年代は、新たなお酒が生まれた時代となり、地方の酒造会社が先頭に立って再び日本酒人気をけん引しています。
若い感性によって生み出された発泡性の日本酒や酸味の強いお酒など、これまでの日本酒の味わいとはかなり異なる点が日本酒人気につながっているところは、いささか複雑な思いもよぎるところです。

■磯自慢のお酒は奇をてらわない

磯自慢酒造では、いい酒を造る酒蔵に戻ろうという選択をしたとき、杜氏と蔵人たちが力を合わせ、手作業で酒造りを行うことを選びました。
これこそがいい酒、高品質の酒を造る最大の要素だと考えたからです。
磯自慢 大吟醸 一滴入魂は、特A地区東条秋津特上AAA山田錦を100％使用し、45％の精米歩合で仕上げた非常に贅沢な大吟醸です。
磯自慢には多くのラインナップがありますが、その中でも最も多くのファンから支持されており、磯自慢酒造を代表する磯自慢といっても過言ではありません。
磯自慢酒造特有のフルーティーな香りに、白桃や洋ナシのような爽快な味わいが楽しめることから、白ワインのように洋風の魚料理に合わせても美味しくいただけます。