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特別に選ばれし磯自慢

■昔ながらの酒造りを大事にする酒造会社

静岡県焼津市にある磯自慢酒造株式会社は、天保元年創業の老舗の酒蔵で、2019年で創業189年を迎えます。
まもなく190年となり、そして創業200年の節目を迎えることは間違いない、数多くの美味しいお酒を生み出してきた確かな酒造りの技術を持つ酒造会社です。
磯自慢酒造は、2008年に北海道洞爺湖で行われた8か国首脳会議とEU委員長が集まった、通称・北海道洞爺湖サミットにおける夕食会の際の乾杯酒に選ばれたことから、一躍全国にその名を知られるようになりました。
長い歴史を持つ酒造会社でありながら、フルーティーな香りと優しい味わいが特徴で、日本酒好きはもちろん、日本酒を飲み慣れていない人や女性にも飲みやすいお酒を造っているというところは、非常に意外な感じがします。
女性に日本酒好きが増えてきた時期、フルーティーな味わいの日本酒が好まれたこともあって、磯自慢酒造も時代の流れとともにフルーティーなお酒を造り出したのかと思いきや、長い歴史において磯自慢酒造の味として大事にしてきたといいますから、周囲が磯自慢の酒の美味しさにようやく追い付いたといえるかもしれません。
昔ながらの酒造りで今も酒を造っている磯自慢の酒は、杜氏を筆頭に蔵人たちが力を合わせて造る、まさに職人技によって生み出されているお酒です。

■日本酒に訪れた変革の時代

高度経済成長期、日本酒は大手酒造メーカーでさえも製造が追い付かないほどに売れまくります。
誰もが一生懸命になって働き、そして晩酌に酒を飲むのを励みにしていた時代ですから、日本酒の製造が追い付かなかったのも無理はありません。
そこで、大手酒造メーカーは地方の酒造会社に依頼し、桶買いを始めます。
桶買いとは文字通り、地方の地酒酒造会社が造った酒を桶ごと買い取る仕組みで、とにかく酒であれば桶で買い上げるのです。
品質の悪い酒であっても、そこそこの品質の酒と混ぜれば、それなりの等級で売り出すことができます。
無条件で買い取ってくれるとなれば、できるだけコストを落とした低品質の酒を造った方が儲けが多くなるため、地酒はどんどんその品質を落としていくことになったのです。
しかしながら、そのツケはいずれ回ってきます。
高度経済成長期が終わり、成熟期に入り、さらにバブルの到来によって洋酒ブームが巻き起こるなどして、日本酒はどんどん売れなくなっていったのです。
低品質の酒ばかりを造っていた地酒の酒造会社は、大手酒造メーカーが桶買いをやめてしまったことでばたばたと廃業に追い込まれていきました。

■先見の明によって救われた磯自慢

磯自慢酒造も、当然のように桶買いに参加していましたが、変わりゆく時代にいち早く危機感を抱き、低品質の酒ばかりを造っていてはいけないと考え、いい酒を造るという原点に立ち返ります。
磯自慢酒造の現在の寺岡社長が、大学卒業後に酒類を扱う商社に勤務していたことが、時代の変化を素早く察知させたのです。
昭和50年には当時の磯自慢酒造の社長であり、現在は会長を務める父と相談し、いい酒、高品質の酒を造ろうと話し合った結果、杜氏による昔ながらの酒造りを再開します。
その際の杜氏の苦労は相当なものだったと語る寺岡社長の言葉から、いかに日本酒の品質が落ちていたかがわかるというものです。
落ちた品質を元に戻し、なおかつ質を高めることへの努力を惜しまなかった杜氏と、磯自慢酒造を守るという経営者の強い決意がなければ、磯自慢という銘酒はこの世から消えていたかもしれません。

■ぜひとも飲んでみたい磯自慢

磯自慢 別撰 本醸造 酒友は、酒米として最高級ランクに分類される兵庫県特A米産地東条産の特等山田錦だけを100％使用しています。
さらに、精米歩合は麹米、掛米ともに60％まで磨いていることから、特定名称酒の規定である60％以下の酒に該当します。
低温でゆっくり丁寧に仕込むという特別な製造方法を行っており、精米歩合60％以下、もしくは特別な製造方法という条件を満たす場合に限って付けることができる別撰の呼称の、どちらの条件も満たしているまさに特別なお酒です。
別撰とは特別に選ぶことという意味であり、まさに選ばれし磯自慢となっています。
味わいは優しく、磯自慢酒造の特徴であるフレッシュな香味が楽しめる逸品です。