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上質の原酒がスコットランドのボトラーズに買い取られた蒸溜所

■ ワインで知られるメルシャンが販売していたウイスキー
メルシャンといえば、家庭用に気軽に楽しむことができるハウスワインのメーカーとして知られていますが、現在はメルシャン株式会社としてではなく、キリングループ傘下の連結子会社としてワイン製造と販売を行っています。
メルシャンがキリングループの傘下に入ったのが2007年のことで、それまでは独自経営をしていました。
1962年に葡萄酒の製造販売を行いながら、ウイスキー造りも手掛けていた大黒葡萄酒を買収したことによって、ワインとウイスキーの両方の製造販売を手掛けるようになります。
大黒葡萄酒はのちにオーシャンと名を変え、軽井沢蒸溜所で造るウイスキーにもオーシャンの名を付けていました。
軽井沢蒸溜所は上質のウイスキーを造り出していたことで知られており、メルシャンのウイスキーは一躍注目を集めます。
世界各国から賞を受けるなど、さまざまな逸品を生み出した蒸溜所ですが、2010年に操業を停止、2012年にはポットスチルが解体され、原酒はすべて売りに出されました。

■ 高品質の原酒を買い取ったのは本場スコットランド
軽井沢蒸溜所ではシェリー樽による熟成にこだわっており、さらに世界でも類を見ない木造の貯蔵庫で熟成させていました。
この木造貯蔵庫にはびっしりと蔦が生い茂り、温度と湿度というウイスキーの味わいを大きく左右する要素を常に一定にしてくれたのです。
まさに、木造の貯蔵庫だからこそできる、自然の恩恵を受けて原酒が眠れる貯蔵庫でした。
軽井沢の気候はスコッチウイスキーを造るスコットランドに非常に似ており、浅間山系のおいしい水で造られるウイスキーはこのうえなく上質なものとなったのです。
シェリー樽にこだわったのと同様、原料もゴールデンプロミス種麦芽にこだわったとあって、ウイスキー造りへのこだわりはニッカウヰスキーやサントリーにも劣らぬものがありました。
そこへ世界的に見ても稀な上質の熟成貯蔵庫という条件が重なり、出来上がった原酒はどれも最高級といっていい味わいだったのです。
2012年に蒸溜所が閉鎖となり、原酒もすべて処分となったとき、そのほとんどがスコットランドのボトラーズメーカーに買い取られたことからも、非常に上質であったことがわかります。

■ 買収の果てにたどり着いた閉鎖
本場が認める上質の原酒と、こだわりの原酒から生み出されるおいしいウイスキーを造っていた軽井沢蒸溜所がなぜ閉鎖となったかは、買収という歴史にあります。
1955年に大黒葡萄酒が創業したのち、1962年にはメルシャンが買収し、2007年にはキリングループが買収しました。
アサヒグループの傘下に入ったニッカウヰスキーが幸運だったのは、アサヒが独自にウイスキーを造っていなかったことと、圧倒的な技術力を持っているニッカウヰスキーを傘下に収めることは、アサヒにとって大きな企業利益をもたらしたからです。
軽井沢蒸溜所が姿を消したのは、キリングループにはすでに富士御殿場蒸溜所があり、イギリスとカナダとの合弁会社としての事業が行われていたことが大きな要因です。
蒸溜所閉鎖は企業としてはまっとうな判断といえますが、せめて原酒だけでも残しておけば、軽井沢蒸溜所の味わいがより多く後世に残されたことでしょう。

■ 日本を感じるコレクター垂涎のシリーズ
軽井沢 能 15年 1994は、軽井沢蒸溜所からリリースされた、二度と造られることのないオフィシャルボトルのウイスキーです。
軽井沢という蒸溜所の名が付いていることからも自信作であることは明白ですが、とりわけ軽井沢の能シリーズは、能面をモチーフにした日本を感じられるラベルや箱が人気で、発売された年のウイスキーのほとんどが完売状態です。
手に入れるとしたらインターネットやオークションなどですが、コレクターが多いのが特徴とあって、なかなか市場に出回ってきません。
ウイスキーの味わいのよさはもちろん、ラベルにもファンが多いとあって、コレクター垂涎のウイスキーとなっています。