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長い歴史が生み出した豊富なラインナップが魅力

■日本の酒と言えば日本酒
日本酒がいつ頃から造り始められたかについては諸説ありますが、最も有力なのは、稲作が定着した弥生時代のこととされています。
一方で、縄文時代後期にはすでに酒造りが行われていたと考えられる遺跡が発掘されていることから、広く稲作が定着した弥生時代に先駆けた縄文時代後期は、稲作が成功した地域から順に、酒造りも行っていったと言えそうです。
弥生時代にはすっかり稲作が定着したことで、日本酒造りの基礎とも言える方法も確立されているといった歴史を垣間見るに、紀元前10世紀頃から紀元後3世紀中頃に該当する弥生時代から現代に至るまで、連綿と続けられてきた米と酒が非常に貴重なものに思えてくることでしょう。
こうした歴史を振り返ることによって、日本の酒はやはり日本酒だということに気づくかもしれず、現在における日本酒ブームの理由の1つにもなっているのでしょう。

■いつ頃から始まったかわからないという共通点
稲作は日本全国に広まったことから、米が作られるところには必然的に酒を造る酒蔵がありました。
豊かな自然に囲まれる石川県白山市は、特別栽培米と呼ばれる上質のお米を作る米どころですので、この地に酒蔵がないはずはありません。
そんな白山市には、創業年数がはっきりしないという、歴史ある酒造会社があります。
菊姫合資会社で、創業は1570年頃と伝わっています。
時は室町時代で、室町幕府最後の15代将軍となった足利義昭が治めていた時代に、菊姫合資会社は誕生したと言えそうです。
創業当時、酒蔵としてどのような屋号を名乗っていたかの記録もなく、ようやく歴史がわかり始めるのが1902年（明治35年）、合資会社柳酒造店となったことです。
その後、1928年（昭和3年）に現在の菊姫合資会社に名を改めて現在に至るわけですが、仮に1570年に創業したとして449年の長きにわたり、創業年だけでなく屋号もわからないままここまで続いてきた酒蔵ということに、驚きを禁じ得ません。

■尖がり変わらない酒造り
謎多き菊姫合資会社には、これまたいつ頃に作られたかがはっきりしないあるものがあります。
それが、酒造りにおける家訓です。
「精米を他所に頼むようなら、酒造りを止めろ」というもので、さすが米どころで知られる白山で長きにわたって酒を造ってきただけのことはある凄まじい家訓と言えます。
この家訓は代々ずっと大切に守られてきており、現在も菊姫として売り出される酒はすべて、全量が自家精米となっているのが特徴です。
本社は明治、昭和、平成の3つの時代にまたがって建てられた蔵で構成された趣ある清酒製造場と、出荷作業にともなう事務仕事を行う事務所になっていますが、貯酒場がある工場は白山の自然に囲まれた中にあり、大きな精米工場は家訓を大事に守ってきたことを実感させてくれます。

■法律で保護された菊姫は一味違う
菊姫 純米酒 加州菊酒（かしゅうきくざけ）は、2005年に認定された原産地表示の対象として、白山GIのラベルが貼られています。
原産地表示とは、白山市がこの地で造られたものであり、一定の基準を満たした高品質な品であることから、その知的財産権を保護するべきだと考えた品のことです。
菊姫合資会社をはじめとする白山市の5つの酒造会社が認定を受けましたが、菊姫合資会社で初めて白山GIの認定を受けたのが、この純米酒の加州菊酒です。
菊姫の純米酒の特徴は、やわらかな旨味とぽったりとした上品な味わいから女酒とも呼ばれるのが特徴です。
ただ、加州菊酒に関して言えば、純米酒でありながら白山の湧水を思わせる清涼感と、ほどよく効いた酸味が特徴のため、キレのあるシャープな味わいです。
いわゆるこれまでの菊姫の純米酒とは大いに異なる、個性的な純米酒に仕上がっています。
軽快な口当たりのため、重い味わいが苦手な人や日本酒を飲み付けていない人、さらには女性にもおすすめの軽やかな味わいの純米酒です。