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スコッチウイスキーファンから絶大な人気を誇るザ・マッカラン

■政府お墨付きの蒸留所が造るスコッチウイスキー
ザ・マッカランは、1824年にスコットランドのスペイサイド地方にあるマレーという場所に創業し、政府公認の蒸留所としてウイスキー造りを始めます。
スコッチウイスキーの産地として知られるスコットランドの歴史を紐解くと、そこには常にイングランドとの対立がありました。
ただ、イングランドの強さには勝てず、議会を乗っ取られてしまったスコットランドは、イングランドによって膨大な酒税をかけられてしまいます。
当時、スコットランドで飲まれていたお酒は、イングランドの人たちから田舎者の酒として馬鹿にされていました。
それというのも、安い賃金で過酷な労働を強いられていたため、手間暇かけて酒を造っている時間もなければ金銭的余裕もなかったことから、蒸留したての非常に強い状態のまま飲んでいたからです。
とはいえ、スコットランドの人たちにとっては大事な酒で、そんな酒にまで法外な税金をかけられたのですから、人々が税逃れに走ったのも無理もないでしょう。
シェリー樽に蒸留したばかりの酒を詰め、山里の奥深くに隠したのです。
その結果、熟成が進み、予期せぬおいしい酒が出来上がりました。
これが、スコッチウイスキー誕生の瞬間です。
イングランドによる圧政と議会の占拠が続く間、スコットランドのあちこちでもっぱら密造酒のウイスキーが造られていた背景には、政治的な歴史があったことがわかります。

■公認の蒸留所の誕生
イングランドが、もともとは独立した王国であったスコットランドを併合したことで、スコットランドでの密造酒造りが盛んになり、皮肉にもスコッチウイスキーはその質を高めていくことになります。
1823年、酒税法改正によって酒税が大幅に引き下げられますが、その理由は当時のイギリス王国ジョージ4世がことのほか好んだスコッチウイスキーが、現在のグレンリベットを生み出した腕利きの密造者、ジョージ・スミスの造る密造ウイスキーだったからです。
国王が密造酒を好むなどということはあってはならないと判断した側近によって酒税の引き下げが行われ、ジョージ・スミスの蒸留所は政府公認の蒸留所第一号の、ザ・グレンリベット蒸留所となります。
酒税改正法が施行された翌年の1824年のことで、ザ・マッカラン蒸留所の創業年も時を同じくしています。
ザ・マッカランが政府公認の蒸留所ライセンスの取得を重視したのは、スコッチウイスキーを取り巻く環境が変わったことにいち早く対応し、正々堂々とウイスキー造りを行いたいという強い意志の表れだったのかもしれません。
こうしてスペイサイド地方には多くの蒸留所が集まり、スコッチウイスキーのメッカと呼ばれるようになったわけですが、その歴史を紐解くと、国と国の対立があり、さらには課税側と納税側とで繰り広げられる飽くなき闘いがあったことは、現代に生きる人たちにも大いに理解できるところです。

■独特の香りでさえも変えてしまうザ・マッカラン
ザ・マッカランのウイスキーは、ウイスキー初心者でも飲みやすいとして人気です。
その理由は、スペインのヘレスから蒸留所に運ばれたシェリー樽のみを使って熟成を行う製造方法を採っていたからです。
そのため、シェリー樽特有の甘い香りが、シングルモルト特有のピート臭のクセを緩和しており、これが飲みやすいとされる最大の理由となっています。
ザ・マッカランのウイスキーはシェリー樽仕込みによって生み出される濃い琥珀色をしており、フルーツケーキを思わせる甘やかで華やかな香りが特徴です。
ただ、ザ・マッカラン1946は、ングルモルトウイスキーならではのピート香が強いという独特の特徴を持ったスコッチウイスキーに仕上がっており、ザ・マッカランの中でも特別なウイスキーと言えるでしょう。
とはいえ、52年もの長きにわたって熟成されことで、スモーキーさを残しつつも、ザ・マッカランならではの甘い香りが加わって、やわらかな味わいに仕上がっています。
シングルモルトウイスキーの最大の特徴であるピート香さえも含めて甘美な味わいに変えてしまうところが、ザ・マッカランの真髄を感じさせる逸品です。