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クリスタルのごとく強く輝くウイスキー


■スペイサイドに位置する蒸溜所

ザ・マッカランを製造するマッカラン蒸溜所は、世界5大ウイスキーの一つ、スコットランドのクライゲラヒに位置するモルト蒸溜所です。
地域としてはスペイサイド地域に分類され、1824年の設立当初はエルキー蒸溜所という名前でした。
マッカランという名前になるのは1892年にタリスカー蒸溜所の共同オーナーだったロデリック・ケンプが蒸溜所を購入したときからです。
ちなみにMacallanというのはスコットランドのゲール語で、「聖フィランの平原」という意味だそうです。
聖フィランというのはアイルランドの聖人で、8世紀にスコットランドへキリスト教を伝道したとされる人物です。
マッカラン蒸溜所の歴史は、1824年にAlexander Reidという人物が正式にライセンスを取得したところから始まります。
ただしこれは表向きのことで、実際にはもっとずっと以前からウイスキーの蒸溜は行われていました。
ウイスキーの歴史を把握するにはスコットランドの密造時代を抜きには語れませんが、実際にいつから造られていたかは定かではありません。
ウイスキーに関する最古の文献は1494年、スコットランド王室の出納記録です。
その頃からすでに王たちはスコットランドウイスキーを飲んでいたはずで、当時は薬という側面が強かったため主に修道院などで造られていました。
とはいえ農民たちも蒸溜していたことは間違いなく、余剰の大麦をお金に換えるためウイスキー造りが盛んだったことが分かっています。
1707年にスコットランドがイングランドに併合されるとウイスキーの課税が重税となり、これにより密造が増えました。
1820年代まではこうした密造時代が続き、無尽蔵にあるピートを燃料に、モルト原酒をシェリー樽を隠すようになったことから近代ウイスキーが生まれたとされています。
1823年にようやく悪法である酒税法が改正し、重税から免許制に変わりました。
これを受けて1824年以降は政府公認のライセンスを取得する蒸溜所が次々に誕生し、のちにマッカラン蒸溜所となるエルキー蒸溜所もこのときに正式に設立する運びとなったのです。
スコットランドでは2番目となる早さで、当時から名門中の名門とうたわれていた蒸溜所でした。

■大戦でのしかかる重圧

マッカラン蒸溜所は設立から順風満帆に現在の地位を築いたわけではありません。
特に暗雲の時期となったのが第一次・第二次世界大戦時です。
世界情勢が激動する中、ウイスキーのクオリティを保つことはとてつもない困難を極めたはずです。
それでもマッカラン蒸溜所は原材料や保管状態を厳しくチェックし、戦時中もウイスキーの品質を落とすことを許しませんでした。
蒸溜所で働く人員も戦地へ駆り出され、蒸溜所は人の確保もままならない状況でしたが、それでもマッカラン蒸溜所は一時的にも操業を止めるようなことはありませんでした。
品質も落とさない、生産もやめない、こうしたプライドをかけた努力が現在のブランドの価値と地位を築く礎となったのです。
第二次大戦中は政府がウイスキーの生産や販売を規制する事態にもなりましたが、これは原料の大麦が食糧へ回される事態になったことが原因でした。
1944年の終わり頃までは蒸溜自体が法的に禁止されるような状況で、穀物の価格が高騰し仕入れもままならない状況でしたが、それでも当時の基準を満たすクオリティのウイスキー造りを維持しながら、マッカラン蒸溜所は知恵と覚悟で臨んだのです。
ようやく戦争が終結しても、こうした影響で激減した熟成ウイスキーの在庫はそう簡単に復活するものではありません。
マッカラン蒸溜所は命がけで守り抜いた品質の高い原酒を目先の利益で手放すことなく、長期的安定的に供給できる体制を守り抜いたのです。

■ザ・マッカラン 1965 クリスタルデキャンタ 25年

マッカラン蒸溜所の歩んできた道のりは、蒸溜所として、職人として、ブランドとして、世界に誇れる輝かしいヒストリーといえるのではないでしょうか。
こうしたブランドが今も世界で愛され、リスペクトされているのは至極当然のことでしょう。
「ザ・マッカラン 1965 クリスタルデキャンタ 25年」は、そんな蒸溜所が1965年に蒸溜した貴重な25年ものの「ザ・マッカラン」です。
ボトルにはイギリス製のクリスタルデキャンタを採用し、「マッカラン M 1824」シリーズとしてリリースしたシングルモルトウイスキーです。
ウイスキー読本では「シングルモルトのロールスロイス」ともいわれますが、歴史を知ればそんな華々しさより、実直でひたむきな職人の意地を感じられるのではないでしょうか。
まさにクリスタルのごとく、強く、透明で、光り輝くブランドのスピリットをぜひ味わってみてはいかがでしょうか。