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日本のウイスキーを世界に通用するものにした切磋琢磨

■竹鶴政孝のニッカウヰスキーと鳥井信治郎のサントリー
日本のウイスキーがジャパニーズウイスキーとして世界を相手に5大産地の1つとして君臨しているのは、ジャパニーズウイスキーの父として知られるニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝と、寿屋洋酒店として早くから洋酒を手掛けてきたサントリー創業者・鳥井信治郎の二人による切磋琢磨の歴史にあると言っても過言ではありません。
竹鶴政孝は職人として、鳥井信治郎は商人として違うフィールドで国産ウイスキー造りを目指し、ともにウイスキー造りを行ったのです。
国産第一号となったサントリーから発売されたウイスキーはさっぱり売れず、竹鶴政孝は10年に契約で勤めた寿屋洋酒店を離れ、自分自身のウイスキー造りを目指します。
鳥井信治郎もまた、竹鶴政孝なき後、第一号の苦い経験を成功に変えるべく、それぞれの道で奮闘していったのです。

■日本にウイスキーを根付かせた功績はサントリー
竹鶴政孝が自ら体を張って学んできたスコッチウイスキー造りに徹底してこだわり、余市の地に蒸留所を作ったのが1934年のことです。
ただ、ウイスキーは蒸留したのち、樽に入れて熟成期間を経ないと原酒が生まれないことから、すぐにウイスキー造りに取り掛かることはできず、それまでの間は大日本果汁株式会社としてリンゴジュース造りと販売を手掛けていました。
一方の鳥井信治郎の寿屋洋酒店は、サントリーウイスキー12年、現在のサントリー角瓶を発売し、大ヒットさせます。
1937年のことで、まさに日本に国産ウイスキーブームを巻き起こしたと言っても過言ではない鳥井信治郎の功績を、竹鶴政孝はどう思っていたのでしょう。
おそらく頑固な職人気質に火を点けられ、より一層奮闘させたのではないでしょうか。

■大日本果汁株式会社からニッカウヰスキーへ
リンゴジュースの製造販売は惨たんたるものでしたが、1940年、ついにニッカウヰスキーは初めてのウイスキーを世に送り出すことに成功しました。
その後、ニッカの工場は統制品となった戦時下の日本で海軍に監督されることとなり、軍への供給のため、比較的安定したウイスキー造りを続けていきます。
一方のサントリーはすでにできあがっていたサントリーオールドを発売することができず、10年後にようやく発売にこぎつけることができました。
竹鶴政孝は鳥井信治郎に後れを取ったものの、戦争という暗い時代に供給品に指定されたことが、皮肉にもニッカウヰスキーの事業を軌道に乗せることになったのです。

■ニッカウヰスキーとサントリーの存在
ジャパニーズウイスキーとは、ニッカウヰスキーの竹鶴政孝とサントリーの鳥井信治郎によって造り出されたと言っても過言ではなく、この二人の存在なくしては生まれなかったと言えるでしょう。
その後、二人がお互いを意識していたかどうかはわかりません。
二人の気質は全く異なり、袂を分かつように離れていったからです。
ただ、国産のウイスキーを造りたいという思いだけは同じでしたので、競争心を持ちながらも結果的には切磋琢磨していたと言えるのではないでしょうか。
日本国内で上質のウイスキーを造り続けてきたのは、まぎれもなくニッカウヰスキーとサントリーですし、創業者として思うところに互いの相違点はあったでしょう。
けれど、二人の熱意があってこ、日本に美味しいウイスキーが生まれ、今では世界にその名を知られるジャパニーズウイスキーとなった功績は、甲乙付けがたいものがありますし、そもそも比べるべきものではないのかもしれません。

■ニッカウヰスキーの対抗心の現れ
NIKKA（ニッカ） オールモルトは、一般的なブレンデッドウイスキーであるモルト原酒とグレーン原酒をブレンドしたのではなく、タイプの違う2種類のモルト原酒をブレンドした画期的なウイスキーで、ブレンドしていながらオールモルトであることが最大の特徴です。
その背景には、家庭向けのウイスキーとして圧倒的な人気を誇るサントリーへの対抗心がありました。
ニッカウヰスキーは家庭向けに受け入れられる、ブランドとなるウイスキーがなかったのです。
何としても知名度を上げたいニッカの戦略は、誰もが不可能だと考えたモルトのブレンドでした。
華やかな香りのモルト原酒とやわらかい口あたりのモルトでできたオールモルトは、雑味のない豊かな味わいが大ヒットし、確固たるブランドを築き上げる看板商品となったのです。
このオールモルトからは、ニッカとサントリーがよいライバルにあったことを思わせます。