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聡明さゆえに偉業を成し遂げた竹鶴政孝

■ジャパニーズウイスキーの父・竹鶴政孝とは
日本のウイスキーの歴史を語るとき、一番に名前が挙がるのがジャパニーズウイスキーの父として知られる竹鶴政孝です。
サントリー創業者である鳥井信治郎もまた、日本のウイスキーの歴史に大きな功績を残した人物ですが、2人は異なる観点からウイスキーづくりを捉えたのが特徴です。
竹鶴政孝はスコットランドに赴き、スコッチウイスキーの産地として当時非常に賑わっていたキャンベルタウンのヘーゼルバーン蒸溜所で、最終仕上げとなる実習を行っています。
職人たちからの嫌がらせもあって、最終仕上げになるかどうかすら危ぶまれたものの、政孝の熱意と行動力、そして聡明さが彼にスコッチウイスキーの造り方をしっかりと学ばせることになりました。
ウイスキーを造りたいという情熱は、政孝からあらゆる障害を排除していったように思えるほどで、非常に困難な状況を潜り抜けてウイスキーづくりの技術を学び取って帰ってきます。
不屈の精神が必要だとさえ感じますが、政孝を支えていたのは純粋に本場のウイスキーの造り方を学びたいという想いだけだったとも言えます。
その理由は、政孝が残した2冊のノートにつらいとか苦しいといった文字がまったく見当たらないからかもしれません。
聡明なうえに、鋼のような精神力を兼ね備えた人物、それが竹鶴政孝だったのです。

■盗人扱いされた逸話
政孝の聡明さを物語る有名な逸話が、英国首相によるスピーチとして残っています。
日本から来た聡明な青年が、一本の万年筆とノートでウイスキーづくりの秘密を盗んでいったというものです。
もちろん、そこにはユーモアと親愛の情があふれていて、英国が誇るスコッチに対する自慢もあったでしょう。
スコッチを元に日本で上質のウイスキーが造られたことへの自負心もあったかもしれません。
それでも、このスピーチには、政孝に対する最大の称賛が込められていたことは確かです。
盗んでいったものはウイスキーづくりの秘密ですが、その盗人はとても頭のよい青年だったというのですから、日本人にはちょっと真似できないユーモアとウィットに富んだ名スピーチです。

■竹鶴ノート
竹鶴政孝は、スコットランドでのウイスキーづくりの記録を2冊のノートにしたためています。
このノートが竹鶴ノートと呼ばれることは、今では広く知られるようになりましたが、英国首相がユーモアたっぷりに描写したように、万年筆で書かれています。
表題には実習報告とあることから、政孝は自分自身の覚書であると同時に、多くの人が見ることになる前提で書いていたのは疑いの余地がありません。
言葉遣いは非常に丁寧で、文字も一字一句、きれいに書かれています。
しかも、万年筆を使っていますので、間違った場合には線で引いて修正するしかありませんが、修正箇所がまったく見当たらないのです。
文字だけでなくポットスチルの外観から、清掃作業のために飛び込んで調べつくした内部構造に至るまで、絵までがすべて万年筆で描かれており、このノートを見ているだけで政孝という人がどんな人物だったかが手に取るようにわかります。
頭のよい青年は、一本の万年筆と2冊のノートにスコッチウイスキーの造り方を詳細に書き記すとともに、当時のキャンベルタウンのことも書き残しているため、非常に貴重な資料としても注目されることになったのです。
政孝の聡明さは、この竹鶴ノートが如実に物語っています。

■余市と宮城峡、2つのニッカウヰスキー蒸溜所の味わいが楽しめる逸品
NIKKA（ニッカ） ピュアモルト 樽出しウイスキー原酒は、1988年から1995年の間に販売されていたもので、現在は造られていない希少品です。
もともとギフト向けの品として、ブレンダーにしか味わうことのできないおいしさの提案をコンセプトにしています。
政孝が造った余市蒸溜所と、政孝の甥で、のちに養子となった威（たけし）が探し当てたニッカウヰスキー第2の蒸溜所、宮城峡蒸溜所の両方のモルト原酒をブレンドして造ったブレンデッドウイスキーなのが特徴です。
使用している原酒は10～12年熟成させたもので、樽出しの後割り水をせずにろ過だけで瓶詰めされている点も、特別さを増している貴重なニッカです。