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実直なコニャックの番人がつくる酒

■コニャックを守り続ける番人
ブランデーの中でもフランスのコニャック地方で造られるものは高品質で知られています。
非常に豊かな芳香と味わいがあるフランスの代表的蒸留酒ですが、コニャック地方も区画され、6つの地区があります。
地区によっては華やかさが特徴であったり、ライトなボディが特徴であったりしますが、中でも最高峰と言われる地区がグランシャンパーニュ地区です。
この地区はアロマが凝縮された高品質なコニャックを生むことで有名なのですが、そこを拠点とする昔ながらの生産者は、今はもうわずかしかいません。
ポールジローはその残りわずかな生産者の代表的な存在です。
ジロー家は400年前から代々この地に住み、ずっと農業を営み続けて来ました。
コニャックを造り始めたのは1800年代の後半からで、その高品質なコニャックは今も昔と変わらない伝統的な方法で作り続けられています。
ジロー氏は、周囲がどんどん機械化されて行くのに対し、今も全てのぶどうを一つ一つ手摘みし、品質を確認しながら収穫しています。
醸造も、時間を早めるためにイースト菌を加えて発酵させるところが増える中、毎日コツコツと状態を確認しながら、自然な発酵を待つスタイルを貫いています。
全ての作業には多大な労力を必要としますが、彼は全ての工程を自分で手掛けることにこだわっています。
膨大な時間がかかっても、自然の賜物であるコニャックづくりを急ぎはしない、それがポール・ジローの守り続けるコニャックづくりの歴史です。
行っているのは特別なことではなく、代々続いて来たことをやっているだけと語るのは、常に真摯にコニャックと向き合う番人だからこそ言える言葉でしょう。

■土地に息づくコニャックづくりの歴史
コニャック地方にはシャラント川がありますが、これはブルボン朝時代アンリ4世が、フランスで最もすばらしい川だと称えた川です。
実は航行しやすくなかなか手のかかる川でしたが、この土壌こそぶどう栽培に理想的なものでした。
ちょうど気候にも恵まれ、大西洋が近いために貿易にも都合が良くビジネスにも適した土地だったため、早速ぶどう農園として開拓されることになります。
その頃の船旅にはワインは必需品でしたが、度重なる長旅で品質を維持するために、ワインの蒸留を始めたのはオランダやイングランドの商人たちです。
特にオランダ商人はワインを焼いて蒸留することで味と品質が格段に上がることを発見し、現在のブランデーのベースを開発しました。
これが17世紀になると二重蒸留が始まり、この画期的な技術を編み出したコニャック地方のオー・ド・ヴィー（原酒）は大人気となります。
アルコール濃度が高くなるので品質も劣化せず、海外への輸出もできるようにすることができたのです。
18世紀になると樽ではなくグラスのボトルがメインとなり、コニャックは一大貿易商品として経済の中心を担うようになりました。
ただ、そうしたグローバルな成功と並行して、コニャック地方の独自性をいかに守っていくべきかは、大きな課題として残ったままです。
世界的な経済商品は維持したい、でもそれでコニャックの伝統が失われてしまっていいはずはない、そんな葛藤は今もなくなったわけではないでしょう。

■自然に無理をさせずに造ったポールジロー 15年 ヴィエイユ・レゼルブ
ポールジローは、一つ一つ手作業で作るプロプリエテールを忠実に守る老舗コニャックブランドです。
ポールジロー 15年 ヴィエイユ・レゼルブは、その長い年月表記を持ちながらも、比較的手頃な価格なのも魅力でしょう。
また、実は15年表記ながら、ブレンドされているオー・ド・ヴィーには20～25年以上のものが使われています。
コニャックはあまりよく知らないという人は、最初に間違いのない味わいを知るために選ぶべきコニャックと言えます。
口当たりはフレッシュですが、奥に絶妙な熟成香が広がり、バランスも醍醐味も申し分ありません。
華やかでエレガントなアロマを感じられるので、テロワールを存分に楽しめる逸品です。