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アラン蒸溜所の設立とその過程における変化の歴史

■アラン島に160年ぶりにできた蒸溜所

イギリスといえばスコッチウイスキーや、アイリッシュウイスキーを思い浮かべる人が多いでしょう。
その中には、それぞれ有名な銘柄があり、ウイスキー通であれば、一つや二つはすぐに名前が挙がってくるのではないでしょうか。
スコッチウイスキーは原料や蒸溜方法によって味わいが異なってくるのが特徴で、そのためスコットランドには多くの蒸溜所が存在します。
スコッチを飲むにあたっては、まずはスコッチウイスキーの基本と言えるシングルモルトウイスキーから始めるのがいいでしょう。
アラン島に160年ぶりにできたアラン蒸溜所も、シングルモルトウイスキーにこだわって造っています。
シングルモルトウイスキーの一番の特徴は、原料に大麦だけを使用していることです。
複数の原料からなるブレンデッドウイスキーに比べ、個性的な味わいに仕上がりますが、それがゆえにウイスキーの奥深さを感じることができます。
アラン蒸溜所が目指すのは、純粋にシングルモルトだけが生み出す味わいを持ったウイスキーです。
そんなアラン蒸溜所ができたいきさつと、現在に至るまでの歴史はわずか20年ほどと、非常に新しい蒸溜所であると言えます。
ウイスキーの歴史そのものが700～800年前からであり、現在の琥珀色をしたウイスキーとなるとさらに短く、200～300年前になるのですが、その中にあっても20年というのは驚異的な歴史の浅さと言えます。

■アラン蒸溜所の設立者

たった20年そこそこの歴史しかないにも関わらず、アラン蒸溜所が造るスコッチウイスキーは、しばしばスコットランドで造られるスコッチウイスキーの中でも最も美味しいと評価されます。
これにはいくつかの理由があり、その理由を知れば、アラン蒸溜所の魅力がもっとよく分かるでしょう。
設立者は長年ウイスキー業界に身を置き、あのシーバスブラザーズをはじめとする様々なところで重責を担ってきたハロルド・カリー氏です。
長年ウイスキー業界に携わってきたことで、ハロルド・カリー氏は自分のプライベートな蒸溜所を持ちたいというのが悲願でもありました。
この悲願を実現するために選んだのが、スコットランドの南西にある小さな島、アラン島だったのです。
アラン蒸溜所はアラン島に160年ぶりにできた蒸溜所ですが、これは合法のという意味であり、アラン島自体は密造酒を造る蒸溜所が非常にたくさんありました。
イングランドに併合されてしまったスコットランドから離れた小島であることや、上質の湧き水が手に入ることから、密造酒づくりにはうってつけだったからです。
設立にあたっては、資金繰りと場所をどこにするかという難問がハロルド・カリー氏の前に立ちはだかります。
それを解決したのが、現在のクラウドファンディングに通ずるアイデアで資金調達をした、彼の息子でした。
ポンドを販売し、そのポンドを買ってくれた顧客に優先的にウイスキーを提供するという方法で資金問題を解決するという、当時としては画期的な資金調達方法だったと言えます。
さらにもう一人の息子は地質学を専攻していたことから、上質の水が確保でき、なおかつ出来上がったウイスキーの輸送が便利な場所であることが譲れない条件でした。
その条件を満たす場所として、地質学の知識を生かし、ロックランザ村が選ばれたというわけです。

■ノンピートをメインにピーテッドタイプにも挑戦

蒸溜開始から20数年を経る過程で、アラン蒸溜所はどんどん設備を整えていきます。
その結果、今ではノンピートをメインにしつつ、少数ですがピーテッドウイスキーも手掛けるようになりました。
「ピーテッドアラン 2004年 バーボンカスク」は、ミディアムピートの麦芽を使用して造られていることから、程よいスモーキー感が感じられ、飲みやすく仕上がっています。
アラン特有のフルーティーな香りと味わいの中に王道のスモーキーフレーバーが感じられるあたり、熟成が早いことが特徴であるアランウイスキーの本領発揮といったところです。