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ブランデーを語るうえで欠かせない存在

■偶然から生まれた銘酒
お酒というのは不思議なもので、誕生してから長い歴史を刻んでくる中で高い評価を受けるブランドが必ず出てきます。
ブランデーの場合、ヘネシーを挙げる人は多いでしょう。
最高級ブランデーとして知られるヘネシーですが、ヘネシーの何がそこまでブランデー好きを虜にするのかは、その歴史を紐解いてみることで分かってきそうです。
コニャックとはもともと、フランスのコニャック地方で作られるワインのことを示していたのですが、実はこのワイン、酸味が強く、アルコール分は少ないという実に低品質のワインでした。
現在のコニャックの原点とはとても思えないワインですが、この低品質のワインを買ったオランダ人貿易商は、このワインを何となく焼いてみたと言います。
さらに、何となく焼いたワインを蒸留したところ、得も言われぬ素晴らしい香りと味わいに変身したと言いますから、コニャックは実に不思議な誕生の仕方をしたお酒だと言えるでしょう。
何となくワインを焼くという発想自体が奇想天外であり、このオランダ人貿易商がいなければ、今のコニャックはなかったかもしれないと思うと、この世は不思議に満ち溢れていると言えます。
当時はコニャックという名前はなく、ブドウ以外の果実を使って作ることもあり、果実の果汁に加熱して作った蒸留酒のことをブランデーと呼ぶようになりました。
コニャック地方でも、最初に作られた果実を使った蒸留酒はブランデーだったのです。

■ヘネシーの生みの親
コニャック地方で生まれたワインを加熱して作った蒸留酒に魅せられたのが、貴族として生まれ育ったリチャード・ヘネシーです。
1749年にアイルランドの貴族の家に生まれたリチャードですが、当時のアイルランドはイングランドによる圧政に苦しめられていたことから、リチャードは自由を求めてフランスへ渡ります。
1750年、ルイ15世の近衛隊外国人士官の将校としてコニャックに駐留したことが、彼の運命はもちろん、コニャック地方のブランデーをもともに変えることになったのです。
15世紀にはすでにコニャックという呼び名が使われており、リチャードがコニャック地方に駐留したときに、コニャックに魅せられたという歴史からも、すでにコニャック地方で作られるブランデーが特別なものとなっていたことが分かります。
リチャードのすごいところは、貴族や将校という身分を捨て、コニャック作りに全ての情熱を注ぎこんだことです。
名前もフランス風にリシャールと変えたため、ヘネシーのコニャックの創始者はしばしばリチャード・ヘネシーとリシャール・ヘネシーのいずれかの表記がされることがあり、知らない人は混乱することでしょう。

■最高級コニャックとして君臨するヘネシー
リチャードの情熱は、コニャック作りにおいて様々な革新的変化をもたらします。
その徹底したコニャックの製造過程から上質のコニャックを生み出すようになったヘネシーは、押しも押されもしないコニャックの最高級ブランドとなりますが、リチャードから連なる子孫が創始者の熱意を受け継いで、伝統を守りながら新しい要素も取り入れてコニャック作りを続けてきたからこそと言えるでしょう。
今では当たり前となっているコニャックの品質を星で示す方法は、リチャードの曾孫にあたるモーリスが親しい人たちに振る舞う際に基準にすべく考え出したものですが、今では世界基準となっており、いかにヘネシーがコニャックに与えた影響力が大きくなっていたかが分かります。

■特別なヘネシー
創始者であるリチャードの名前を取った「リシャール・ヘネシー」は、200年を超える長い熟成期間を経たものも含む、100種類もの原酒を使って作られています。
これによって、ヘネシーの長い歴史が培ってきた技術と情熱の結晶ともいうべき、最高級品質のコニャックが誕生しました。
ヘネシーの歴史において、これ以上のコニャックはないというものが出来上がったときに創始者の名前を付けることにしたのか、それとも創始者の名前にふさわしいコニャックを作ろうとしたのかは分かりませんが、間違いなくヘネシー熟練の技の全てが詰まっているコニャックとなったのは確かです。