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土壌と将来を見つめる眼差しが生む銘酒

■ 世界有数のシャンパンメゾンの誕生
ルイ・ロデレールのメゾンは1776年から操業を開始していました。
創立者はデュボワという親子で、メゾン名もデュボワでしたが、のちにニコラ・シュレッダーという人物に買収されることになります。
このニコラ・シュレッダー氏の甥にあたる人物が、ルイ・ロデレール氏です。
ロデレール氏はすでに起業家として優れた才能を発揮していました。
1833年にメゾンの経営を引き受けると社名をルイ・ロデレールと命名し、そこから世界に名を轟かす一大メゾンの歴史が始まったのです。
ロデレール氏が自身の名を冠したことを考えても、彼がこのメゾンの経営に全力で取り組む覚悟が見て取れますが、卓越した洞察力を持つ彼はまずブドウの栽培から目を付けます。
人任せのメゾン経営ではなく、原材料の栽培から出荷まで一貫して最高のワイン造りを極めようとしたのです。
そしてその才は、ワイン造りにおいても遺憾なく発揮されました。
ロデレール氏のオリジナリティはワインに確固たるブランドを築き上げ、19世紀半ばにはメインエリアであるシャンパーニュ地方にグラン・クリュ畑を複数所有するまでに至ったのです。

■ ワインを生む「将来への眼差し」
当時一般的なシャンパーニュ・メゾンはブドウはほかから買い付けていましたが、ロデレール氏は自社畑のブドウを使うことにこだわり続けました。
いかにしてよいブドウを作るか、区画ごとに特徴を調べ土壌に関する造詣を深めていきます。
その結果、最高のブドウができる土地だけを厳選する眼を養い、複数のグラン・クリュ畑から最高品質のワインを効率的に生産することに成功したのです。
ロデレール氏は、優れたワインを生むのは土壌の質と伝統に対する情熱だと語っています。
そして、将来への眼差しによってそれは生まれるという基本理念を掲げ、メゾンの名声を確固たるものとしたのです。

■ 天性の研究者
ロデレール氏は事業を海外展開することに早くから着目しており、1870年代にはすでにロシアやアメリカへ年250万本ものシャンパンを輸出する実績を得ています。
特にロデレール氏のシャンパンはロシアで非常に人気が高く、生産量の約30％もがロシアへ輸出されていました。
ロシア皇帝アレクサンドル2世にも愛されたことは特筆できるでしょう。
優れた洞察力、鋭い経営力、卓越したセンスを称賛されることが多いロデレール氏ですが、彼が有していたのは天性の研究者という才能です。
彼はロシア皇帝のために特注のシャンパーニュを造り、1876年には世界最古となるプレスティージュ・キュヴェ「クリスタル」を生み出しました。
緻密で繊細、エレガントで上品なクリスタルは、今なお世界中が最高級と評するルイ・ロデレールの象徴的なシャンパンです。

■ 脈々と受け継がれる信念
1920年代になると、レオン・オルリー・ロデレール氏が複数のヴィンテージから一貫してブレンドする最高級のワインを生み出します。
現在ブリュット・プルミエの基礎となっているのは、このときに生まれた繊細なブレンド技術といいます。
1933年からは、元妻のカミーユ・オルリー・ロデレール氏がオーナーを引き継ぎます。
そして農学者で醸造家のカミーユ氏の孫であるジャン・クロード・ルゾーがのちにメゾンを引き継ぎ、さらに自社のブドウ畑が強化されました。
そして現在メゾンを経営しているのは、ジャン・クロード・ルゾーの息子、ロデレール家7代目のフレデリック・ルゾー氏です。
家族経営という伝統的なメゾンのスタイルのもと、揺るぎない信念は連綿と紡がれ、今なお最高の銘酒を生み出し続けているのです。

■ 歴史を刻むルイ・ロデレール ブリュット・ナチュール・フィリップ・スタルク・ボックス 2006
現社長のフレデリック・ルゾー氏が、メゾンの歴史に刻むためフィリップ・スタンクとコラボレーションしたのがブリュット・ナチュール・フィリップ・スタルク・ボックス 2006です。
ゼロ・ドザージュ（リキュールなどの加糖は一切行わない）シャンパーニュであり、全世界で5ヶ所のみの販売となった幻の逸品です。
選ばれたのはフランス、イギリス、アメリカ、そしてアジア圏では香港と日本のみです。
日本が選ばれたのは幸いですが、6,000本限定で発売された銘柄ですので、出会えたらそれはまぎれもなく幸運といえるでしょう。