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■英国女王ヴィクトリアが心酔したウイスキー

１８４８年、夏の休暇を過ごすために借り受けたバルモラル城に滞在するヴィクトリア女王が隣接するロッホナガー蒸溜所からの招待を受け、突如訪問したことをきっかけに王室御用達の証である「ロイヤルワラント」の冠を授与されたというのは、「ロイヤルロッホナガー」の名が語る由緒正しい歴史です。
ヴィクトリア女王は、愛飲している極上のボルドーワインに「ロイヤルロッホナガー」を数滴落として飲んでいたと言われるほど、ロッホナガーのモルトが大のお気に入りだったとか。
フレーバードワインとウイスキーでつくるカクテルは存在しますが、混ぜることでアルコール度数をより高める嗜み方は、まさに君主としての責任感に富む強い女性らしいハイクラスな楽しみ方と言えるでしょう。
現在のロイヤルロッホナガー蒸留所はDCL（The Distillers Company Limited）の継承団体であるディアジオの傘下にあり、ロイヤル・ワラントを保持していないため王室御用達としての扱いはありませんが、蒸溜所からチャールズ皇太子に贈られた樽を３０年熟成させたのち、皇太子７０歳の誕生日となる２０１８年１１月１４日に２０６本限定でボトリングするなど王室との関わりは続いています。

■ロイヤルロッホナガー蒸溜所の歴史

スコットランドのハイランド地域に位置するロイヤルロッホナガー蒸溜所は、地元の資産家だったジョン・ベグが創業者となり１８４５年に設立されたものですが、実は前進となる蒸溜所が存在していました。
ロッホナガーの始まりは１８２３年、元々は違法蒸留業者であったジェームス・ロバートソンが、ウイスキー密売業者の活動が盛んだったディー川の北岸に初めて「グレン・フィアダン」という合法の蒸留所を設立したことからスタートします。
しかし、建設からわずか３年後となる１８２６年に合法会議へ出席したことに対する反感から密造酒業者達によって施設を全焼されられてしまいます。
これを機にロッホナガー山へ拠点を移したジェームスは新たに「ロッホナガー蒸溜所」を設立することになりますが、１８４１年には２回目の不審火による火災に見舞われ、蒸溜業から撤退することとなります。
その後、ジェームスの意思を継いで現在の地であるディー川の南岸に新しく「ロッホナガー蒸溜所」を再建したのがジョン・ベグです。
ジョン・ベグがロッホナガー蒸溜所を設立して３年後となる１８４８年、隣接するバルモラル城を借り受けて滞在していたヴィクトリア女王と王配アルバート公がお忍びで蒸溜所を訪問したことによりロイヤル・ワラント(王室御用達)を得ることに成功したロッホナガーは、以降「ロイヤル」を冠して正式名称を「ロイヤルロッホナガー」とし、上流階級の人々にもその名を知られることになったのです。

■定番ボトル「ロイヤルロッホナガー１２年」の特徴

ロイヤルロッホナガー蒸留所はスコットランドの老舗蒸留所のなかで３番目に小さく、ディアジオ社が所有する蒸留所では最小の規模のため生産量に限りがあり、少数精鋭で最も希少性の高いシングルモルト・スコッチウイスキー銘柄のひとつとなっています。
そんな数少ないラインナップの中でスタンダード品として親しまれているのが「ロイヤルロッホナガー１２年」。
熟成にはシェリー樽を使用し、果実の酸味やスパイシーさを伴った複雑で洗練された華やかな味わいを特徴とし、青りんごやマスカット、レーズンや紅茶のように上品な芳醇な香りがなんとも魅惑的。
スムースな舌触りでおだやかな甘みが感じられる安定した味わいの１２年は、ウイスキー初心者にも安心しておすすめできる１本です。