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ニッカウヰスキーに続く東北が誇るウイスキーを造る会社

■ 日本酒に焼酎にウイスキー
福島県郡山市に本拠を置く笹の川酒造株式会社は、日本酒や焼酎の製造販売を主に手掛ける酒類醸造会社ですが、ニッカウヰスキーに次いで東北地方で最も早くウイスキー製造免許を取得したことから、ウイスキー造りも手掛けるなど、幅広いジャンルの酒の製造技術を持っている酒造会社です。
世界にその品質のよさが知られるジャパニーズウイスキーは、いわゆるその地の特徴を反映させた地ウイスキーであり、笹の川酒造が造っているウイスキーは、地ウイスキーブームに乗って全国に知られていきました。

■ 創業は明治時代
笹の川酒造が創業したのは1765年（明治2年）のことですので、長い歴史を持つ酒造会社です。
創業当初にどのような屋号を使っていたのかは定かではありませんが、1920年（大正9年）に株式会社山口酒造店に、そして1932年（昭和7年）には山桜酒造合資会社を設立しています。
笹の川酒造が誕生したのは1866年（昭和41年）のことで、1998年（平成10年）に、それまで別々だった山桜酒造と笹の川酒造の2つが合併し、現在の笹の川酒造に至ります。
戦後間もない1946年（昭和21年）にウイスキー製造免許を受けたものの、ウイスキーモルト貯蔵庫が落成したのはそれから37年後の1983年（昭和58年）でした。
貯蔵庫完成とともに発売したチェリーウイスキーが大ヒットしますが、翌年の1984年（昭和59年）には焼酎ブームが巻き起こって焼酎類の売れ行きが伸びるなど、比較的順風満帆に酒の製造販売を行ってきた酒造会社といえます。

■ 世界から注目されるウイスキーを製造・販売
現在、埼玉県羽生市で清酒や焼酎、ウイスキーを製造販売している東亜酒造は、過去に民事再生を申請し、キング醸造に営業譲渡しました。
キング醸造ではウイスキーの原酒はすべて処分としたため、東亜酒造創業者の孫にあたる肥土（あくと）伊知郎が原酒の引受先に奔走したのです。
2004年（平成16年）のことで、その原酒の預かり先に名乗りを上げたのは唯一、笹の川酒造だけでした。
2005年（平成17年）、ベンチャーウイスキーによる企画に基づき、笹の川酒造が預かっていた原酒から造り出したのが、今や世界から注目されるようになったイチローズモルトです。
ベンチャーウイスキーが送り出すイチローズモルトは、最も注目されているジャパニーズウイスキーの一つですが、その第一号を笹の川酒造が造って販売したという形で世に出したのは、引き取り手がなく、困り果てていた肥土に手を差し伸べてくれた、ただ一つの酒造会社だった笹の川酒造に対する、感謝の思いからだったのではないでしょうか。

■ 笹の川酒造のウイスキー
笹の川酒造は、戦後間もない時期に早々にウイスキー製造免許を取得していますが、国内市場の低迷から原酒の蒸溜をやめ、残った原酒に海外から仕入れた原酒をブレンドするなどしてウイスキーの販売をするにとどめていました。
2014年に竹鶴政孝をモデルにしたドラマ「マッサン」の大ヒットで再び起こったウイスキーブームを受け、新たな設備を導入して2016年から再び原酒の蒸溜を始めています。
地ウイスキーブームで全国に知られる存在となった笹の川酒造が、今後どのようなウイスキーを造ってくれるのか、非常に楽しみです。

■ 2つのバレルで熟成させたモルトウイスキー
笹の川酒造 963 ミズナラウッドフィニッシュ17年 ブレンデッドウイスキーは、笹の川酒造の963シリーズのうちの一つで、バーボンで使われたバレルと呼ばれる樽で17年以上熟成したモルトウイスキーを、さらにミズナラ樽の新樽で後熟させた、ミズナラウッドフィニッシュという手間をかけて造ったウイスキーです。
華やかでドライな果実香とバニラの甘み、その中にアクセントとして香木のアロマが感じられ、クリーミーな口当たりとピリッとスパイシーさ、さらにビターなウッディさも混じって非常に複雑ながらも余韻を長く楽しめる上質なブレンデッドモルトウイスキーになっています。
着色や冷却ろ過をしていないことから、ウイスキー本来の味が楽しめるロックやストレートがおすすめです。