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地元の人たちに愛されてきたまさに地元の銘酒

■芋にこだわり、麹にこだわる小さな蔵

鹿児島県は、鹿児島を象徴する雄姿で知られる桜島から噴出する火山灰が長年にわたって降り積もり、シラス台地と呼ばれる水はけのよい地表を作り出しました。
シラス台地はサツマイモを育てるのに最適で、鹿児島県が芋焼酎の産地日本一となったことと無関係ではありません。
鹿児島県さつま市にある「櫻井酒造」は小さな蔵で、年間生産量は一升瓶で5,000本足らずです。この少ない生産量の蔵元が良質の芋焼酎を生み出すとして知られています。
櫻井酒造の焼酎は、良質のサツマイモにこれまた絶品と称される黒麹菌を使い、伝統的な芋焼酎の製法から生まれるプレミア焼酎になります。

■もともと薩摩で作りたかったのは米

米を主食とする日本人にとっては、米を作ることは農業の基本と言えます。
そのため、薩摩でも米を作っていたのですが、桜島からの火山灰によって作られたシラス台地は水はけがよいため米がうまく実らず、しばしば米不足に陥りました。
もともと薩摩でも1600年代までは、焼酎も米を使った米焼酎が造られていたのですが、深刻な米不足もあって、1705年に利右衛門(りえもん)なる人が琉球からサツマイモの苗を持ち帰り、栽培に成功したことが、薩摩における焼酎の原材料の変化のきっかけとなります。
サツマイモ栽培に成功した利右衛門は、近隣の農家にサツマイモの栽培方法を教えて回り、さらには薩摩藩がサツマイモ栽培を奨励したこともあって、瞬く間に薩摩全土でサツマイモが栽培されるようになりました。
生産量が拡大したことで、苦労しても少ししか収穫できない米ではなく、たくさん収穫できるサツマイモで焼酎を造ろうということになったのは、自然な流れでした。
現在、鹿児島県では100を超える酒蔵が焼酎を仕込んでいるのに対し、日本酒を造っている酒蔵はわずか1軒だけと言われています。
鹿児島で酒といえば焼酎のことを指すのは、1705年に一人の人物が手に入れたサツマイモの苗から始まったという歴史的背景があるのです。

■焼酎造りに適しているのは黄金千貫

サツマイモと一口にいってもさまざまな種類があることはよく知られていて、焼酎造りにおいて最も適しているのは「黄金千貫(こがねせんがん)」と呼ばれる品種です。
黄金千貫はアルコール発酵のもととなるデンプンを多く持っていることから焼酎造りに適しています。栗のようなホクホクした甘みと滑らかな舌触りが特徴です。
昭和50年代、鹿児島ではより芋焼酎に適したサツマイモをということで品種改良が重ねられていました、その結果生まれた黄金千貫は、いわば芋焼酎のためのサツマイモと言えるでしょう。
黄金千貫から出来上がる芋焼酎は上品な甘さがありながら、芋焼酎特有のクセがなく、すっきりとした味わいが楽しめることが、芋焼酎ブームへとつながった魅力です。
シラス台地という独特の地質であったことから、米を作るには非常に苦労がありましたものの、サツマイモによって救われました。

■さつま市で人気の焼酎の蔵元

鹿児島県内にはたくさんの焼酎の蔵元がありますが、さつま市にある櫻井酒造は規模は小さいながらも、上質の芋焼酎を造ることで知られています。
櫻井酒造では、新鮮なサツマイモが手に入る9月から11月のみを製造期間としているため、わずかな時期しか焼酎造りを行いません。
さらに原料の芋を2割削るという製法をしており、雑味のないたいへん飲みやすくておいしい芋焼酎を造り上げています。入手困難なプレミア焼酎を造る蔵元として焼酎マニアの間では知らぬ者はいないと言っても過言ではない存在です。
櫻井酒造が長年作ってきた看板商品ともいえる「さつま松の露」は、白と黒の麹をブレンドして作ることが多い櫻井酒造の焼酎の中では珍しく、白麹だけで作っています。
昔から地元で愛されて来た櫻井酒造のレギュラー酒ですが、訳あって鹿児島県内だけでのみ販売されている数量限定の芋焼酎となっております。
芋特有の甘い香り立ちに、のどごしのよい柔らかな味わいが特徴的な逸品です。