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崇拝される「泣き叫ぶ鷲」のワイン

■カリフォルニアのカルトワイン

「スクリーミング・イーグル」の名は、2014年にアメリカカリフォルニア州ナパヴァレーの三ツ星レストランで起こった、高級ワイン盗難事件で一躍有名になりました。
盗難に遭った高級ワインのほとんどはロマネコンティ、そしてこのスクリーミング・イーグルだったからです。
カルトワインという呼び名は、単に希少性の高い高級ワインに付けられるものではありません。
そこには世界中で争奪されるほどの崇高、熱狂のニュアンスが含まれます。
そんなカリスマワインを生み出したのは、不動産事業で成功していたジーン・フィリップス女史です。
フィリップス女史は会社設立後、ナパヴァレーのオークヴィルに購入した土地でブドウを作り、地元のワイナリーに売っていました。
数年間は23ヘクタールばかりの小さな畑でブドウを栽培し、そのほとんどを売却していたのですが、その中の小さな区画だけが異様に高いクオリティのカベルネ・ソーヴィニヨンを生み出すことに気付きます。
フィリップ女史はそのブドウだけは手元にキープし、自分でなんとか形にしたいと考え抜いた末、カリフォルニアワインの父とも呼ばれるロバート・モンダヴィ氏のワイナリーに持ち込みます。
ワイナリーで働いている従業員に意見を聞いて回った結果、その区画のブドウだけでもワインを醸造してみる価値があることが判明したと言います。
そこでフィリップス女史はナパの伝説の求道者リチャード・ピーターソンに相談し、娘のハイディ・ピーターソン・バレットを醸造責任者として招くことにしました。
スクリーミング・イーグルの初ヴィンテージは1992年、試飲で確信を持った彼女は1995年には他の区画に植えていたリースリングをすべて引き抜き、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどの品種に植え替えたと言われています。
果たして少量の初スクリーミング・イーグルヴィンテージはリリースと同時にカリフォルニアのカルトワインとして、ナパヴァレーのワインの歴史を塗り替えたのです。

■世界中で絶賛される幻のワイン

1992年の初ヴィンテージが高く評価されたことはもちろん喜ばしいことですが、実は快進撃はまだまだ始まったばかりでした。
きっかけは業界で一番影響力の高いワイン評論家ロバート・パーカー氏が、このスクリーミング・イーグルに99点を付けたことです。
しかもスクリーミング・イーグルは翌年リリースの1993年がパーカーポイント97点、1994年が94点、1995年が99点、1996年が98点という高得点を維持し、ついに1997年は100点満点を叩き出しました。
このときすでに世界中で最も入手困難なワインとしてコレクターが切望する逸品となっていましたが、2000年のオークションではマグナムボトル約5,300万円という値が付いたことでニュースにもなりました。
しかもその後もロバート・パーカー氏は2007年、2010年、2012年とスクリーミング・イーグルに100点満点を付ており、ほかにも3回の99点と4回の98点を付ています。
ファーストヴィンテージから立て続けに高い評価を受けた希少なワインが、カルトワインの呼び名を欲しいままにしている理由には納得せざるを得ません。

■スクリーミング・イーグル カベルネ・ソーヴィニヨン 2011

世界に名を轟かせるスクリーミング・イーグル カベルネ・ソーヴィニヨン 2011」は、穏やかな香りの底に力強い果実味が潜む濃厚な赤です。
タンニンが極めて滑らかで抵抗がなく、非常にエレガントな出来だと言われています。
2011年といえば醸造責任者を務めたアンディ・エリクソン氏がスクリーミング・イーグルを去った年ですが、彼は2006年にハイディの後任としてワイナリーに入り、2007年にはパーカーポイント100点を獲得した腕利きです。
そんな彼の最後の作品ともいえる至極の1本はなかなかお目にかかれるものではありません。もし出会うことがあれば迷わず手を伸ばしたい逸品です。