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幻のスコッチ・ウイスキーと呼ばれるスプリングバンク15年の青アザミ

■ほとんど見かけることがない幻のスコッチ

「スプリングバンク 15年 青アザミ」は1994年にスプリングバンク蒸溜所でボトリングされたスコッチウイスキーで、同じシリーズの12年や21年がときどき見かけることがあるのに対し、ほとんどその姿を目にすることがありません。
そのためウイスキー愛飲家たちの間では「幻のスコッチ」と呼ばれ、伝説のスコッチ・ウイスキーの一本に数えられています。
1828年に創業したスプリングバンク蒸溜所は、スコットランドで最も歴史のある蒸溜所です。
蒸溜所としては珍しい独立資本での製造を行っており、キャンベルタウンモルトウイスキーの代表的存在といえます。
現在キャンベルタウンでは3つの蒸溜所による5つのブランドのウイスキーが生産されていますが、そのうちの3つがスプリングバンク蒸溜所で生産されるブランドとなっています。
スプリングバンク蒸溜所の2018年のアルコール生産能力は75万リットルで、世界的にも有名な蒸溜所としての知名度に比べると生産規模はかなり小さめです。
しかしほんのりとしたキャラメル感のある上品で甘い香りとトロピカル感のあるソフトクリーミーな舌触りが特徴の「スプリングバンク 15年 青アザミ」は、スプリングバンク蒸溜所が贈る最高傑作品であることは間違いありません。

■蒸溜年度が不確かな青アザミ

「スプリングバンク 15年 青アザミ」のボトルラベルには青アザミがデザインされていますが、このアザミそのものも貴重な花として知られています。
すでに終売品となっている「スプリングバンク 15年 青アザミ」は、実際にいつ頃蒸溜されたのかその年代ははっきりとしていません。
しかし恐らく1970年代に蒸溜されたモルト原酒を使用していると思われ、その品質は現行品の「スプリングバンク 15年 ブラックラベル」といったボトルでも太刀打ちできないほど、上品な香りと味わいを豊かに備えた秀逸品と言っても過言ではありません。
グラスに注いだときに香り立つ花のようなアロマが、スプリングバンク蒸溜所のウイスキーが「香りの香水」と讃えられる所以です。
やわらかさと力強さを感じさせるアルコール感と塩味と燻したピートの味わいのバランスが絶妙で、キャンベルタウンモルトの魅力をいかんなく発揮しています。
ラベルの中にひっそりと隠れるように描かれている青アザミのように、「スプリングバンク 15年 青アザミ」もどこかに姿を隠しているのでしょうか。
そうだとしたら、ぜひともその姿を見つけ出したいものです。

■歴史ある蒸溜所の伝統を受け継ぐスプリングバンク蒸溜所

現在スプリングバンク蒸溜所では「スプリングバンク」と「ロングロウ」、それに「ヘーゼルバーン」の3つのブランドを生産しています。
ノンピートの「ヘーゼルバーン」はかつてキャンベルタウンにあったヘーゼルバーン蒸溜所の製法に倣って造られているウイスキーで、3回蒸溜で仕上げているのが特徴です。
ヘーゼルバーン蒸溜所は1920年にニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝氏が実習を行った蒸溜所として知られており、竹鶴氏は5ヶ月間の実習で得た知識と技術を2冊の大学ノートにまとめました。
これがあの有名な「竹鶴ノート」で、後に信州のマルス信州蒸溜所建設の際にも用いられました。
しかしそんな伝統と歴史のあるヘーゼルバーン蒸溜所も、キャンベルタウンの衰退とともに蒸溜所の閉鎖へと追い込まれます。
スプリングバンク蒸溜所自体もこれまでに2度の蒸溜所閉鎖を経験しましたが、オーナー会社の設立や買収によって蒸溜を再開してきました。
スプリングバンク蒸溜所が「ヘーゼルバーン」の蒸溜を開始したのは1997年のことで、それに先駆けて1985年に初リリースとなったのが「ロングロウ」です。
1999年には世界で初めてオーガニック大麦を原料にしたシングルモルト・ウイスキーの「スプリングバンク 7年 ダ・ヴィーレイ」と発売するなど、いまはなき歴史と伝統のある蒸溜所のウイスキーを守りながら新しいキャンベルタウン・モルトウイスキー造りにも取り組んでいます。